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第一章
虎退治
「もうドイツ軍には力はないって?」
「何処の馬鹿だ、そんな大嘘こいたのは」
雨の中でアメリカ軍の軍服を着た男達がぶつくさと不平を述べていた。彼等は森の中の少しばかり開けたその場所でまずいレーションを口にしている。
誰もが疲れきっている。それまで快進撃を続けていたのが一気に覆されたのだ。
ノルマンディーから上陸した彼等は一気にパリを陥落させた。そうしてすぐにドイツまで雪崩れ込もうとした。しかしここで、であった。
ドイツ軍が反撃に出て来たのだ。雨天を衝いて精鋭を送り込んできた。それで連合軍の主力を構成していたアメリカ軍は大混乱に陥ったのだ。
それは彼等も同じだった。いきなり出て来たドイツ軍に追い立てられ瞬く間に追い返された。そうして今この場所でレーションを食べているのだ。
「なあ」
「何だ?」
若い兵士の一人ジョーンズが同僚のバージルの言葉に顔をあげた。
「あの戦車何だ?」
「あの馬鹿でかいのか」
「そうだよ。タイガーか?」
ドイツ軍の重戦車である。八八ミリ砲を搭載し重装甲を持っている。アメリカ軍にとってはかなり厄介な相手である。
ドイツ軍の戦車は手強い。一両一両ならアメリカ軍の戦車よりも強い。その中でもタイガーはとりわけ強力な戦車なのである。
「あれが出て来たのか?」
「いや、あれは違うだろ」
バージルはジョーンズに対して述べた。
「シルエットが違うだろ」
「そういえばタイガーは角ばってるがあれは少し曲がってるな」
ジョーンズも言われてそのことに気付いた。
「何かな」
「だろ?だからあれはちょっと違うな」
首を傾げさせても述べたのだった。
「何かな」
「けれどタイガーの感じだな」
「ああ、それはな」
しかし似ていることは似ているとも感じているのだった。
「似てるよな」
「しかしな」
ここでバージルはまたうんざりした顔で述べた。
「俺達の部隊はどうなったんだ?」
「もうずっと後ろに逃げただろ」
「速いな」
「相手があんなのじゃ逃げるしかないだろ。航空隊もこの天気じゃな」
「動けないってわけか」
「無理だな」
空を見上げると雨だ。おかげで彼等はレインコートのお世話である。そうしてそのうえで少し離れた場所に置いている自分達の戦車を見るのだった。アメリカ軍の主力戦車であるM4シャーマンである。その独特のかなり高い車体がかなり目立っている。
「おいチャーリー、エドワード」
バージルは二人の名を呼んだ。
「戦車の方に異常はないか」
「ああ、大丈夫だ」
「被弾したが異常はなかった」
戦車のチェックを内外から行っていた二人がバージルの問いに応えてきた。
「運がよかったな」
「あの衝撃
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