1話 「イン・ザ・リメインズ」
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言われるがままに地図を見ながら移動を開始する。
それにしても、戦いに集中していて気付かなかったが、ブラッドリーは戦いの途中に何をしていたのだろう?ただ見ていただけだとしたら、かなり性格が悪いと言わざるを得ない。苦戦している事を知っていて淡々と傍観しているなど非道だろう。
そう思い後ろをちらりと見たセリアは――背後に広がる光景にただ一人気付き、愕然とした。
「こ、これ………魔物?全部死んでる……」
セリア達の背後には、バラバラに引き裂かれた十数体近くの魔物が体液を撒き散らして死んでいた。
まるで嵐に巻き込まれて為す術なく散らされたように命を失ったそれは、無造作に草刈りをした後のようだった。
「これ全部ブラッドリーさんが……?」
地面を見ると、深い深い足跡があった。メンフィスやイルジュームが深く踏み込んだ後に形状が似ていたが、その深さは二人のそれとは段違いに深い。地面を抉ることなく、足の裏だけに体重をかけたような美しい足跡。その足跡の周囲を見ると、魔物の死体が足跡を中心にするように散っている。
まさにここで踏み込んで、あの背中の剣で複数の魔物を屠ったのだ。どれほど鋭く重い斬撃だったのか、魔物を斬った血がかなり遠くの樹木にまで付着している。
自分たちが戦っている間、6人は背後からの襲撃をずっと警戒していた。
乱戦に近い状態で陣の背後を突かれると本当に全滅する可能性があったからだ。
だが、その警戒はある意味で杞憂だったらしい。
背後に魔物はいたのだ。
自分の所に来なかったのは、ブラッドリーがそれを迎え撃ったせいだった。
6人がかりで数体の魔物に苦戦している間に、ブラッドリーはたった一人でそれを殺したのだ。そして最低限の助力分を果たし、息ひとつ乱さないままに、醜態を晒すセリア達の下へと歩み寄ってきた。
セリアはその姿を想像し、彼の雄姿を見れなかったことを後悔した。
魔物の死体や周囲の戦闘痕から、一撃一撃が必殺の威力だったことが伺える。自分を囲う魔物に剣一本で立ち向かい、圧倒的な強さで一方的に打倒――まさに一騎当千の戦士。
自分たちのお目付け役である彼が、自分たちでは遠く及ばない実力者であることを予感させる痕跡を見ながら、呟く。
「凄い………」
「おい、セリア?早く行くぞ!」
「あ、うん。ゴメン……」
これほどの実力者に見られているのだ。自分など足元にも及ばない。
もっと頑張らなければ――と、セリアは思いを新たにした。
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