1話 「イン・ザ・リメインズ」
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い男だと内心で訝しんだ。
長い長い階段を下り、6人はとうとうリメインズ第一層に到着する。
どのような廃墟が広がっているのか――と様々な想像を膨らませていたセリアを含む全員が、その光景にしばし絶句する。誰もが目の前に広がる光景を食い入るように見つめ、やがて一人が絞り出すようにその驚きを言葉にした。
「これが、ダンジョン……?これは、森でしょ?」
規格外の場所だとは聞いていたが、まさかこのような構造になっていたとは予想だにしなかった。
そこに広がっているのは、言葉通り「森」。
光が差し込まない筈のダンジョン内に降り注ぐ光を浴びて成長した草木が生い茂り、緑緑とした生命力が空間に溢れる植物の集合体。それは、地上にある森と遜色がないほどの規模を持った広大な空間。
目を凝らすとあちこちに木造の建物やレンガの建造物、そしてそれらを繋ぐ高台や吊り橋が縦横に走っている。あれが遺跡なのだろうか。
「ぶ、ブラッドリーさん。これは……?」
「……建物や吊り橋などの人工物は、俺達マーセナリーが踏み込む前からあった。植物もな」
このリメインズが発見された時からこの光景はほとんど変わっていない、とブラッドリーは言う。
空からは常に不明な光源によって明るさが確保され、エリアにのあちこちに水場があるため植物はそれを吸い取って姿を保っている。そして、そんな中に微生物や虫、そして大小さまざまな魔物が住むことによって疑似的な生態系が保たれているそうだ。
今ではこのエリアに出現する魔物はずいぶん減っているし、建物は一通り調査が終わっているため発掘活動は行われていない。そのためこのエリアは新人が魔物に慣れるための練習場と化しているという。なお、このような植物が多いエリアは10層まで続き、そのどれもが生息する植物や形状が微妙に異なっているらしい。
一通り説明を終えたブラッドリーは呆れたように呟く。
「そんなことも知らないままマーセナリーに入ろうとするとは……迂闊だぞ」
「むぐっ!た、確かに下調べなしに挑んだのはちょっと迂闊でしたけど………」
「確かにこれは失敗だったなぁ。毒持ちの魔物が多い場所には毒消しを多く……みたいに予め必要な装備を見極めておかなかった。痛い目を見ても文句は言えないや」
「………ちなみにこの層は体液に毒を持つ魔物が多いから、毒消しではなく対毒神秘術のほうが重要だ。準備をしておけ」
そう言うと、ブラッドリーはギルドメンバーにこの層の地図とリメインズ用コンパスを手渡し、隊列の後ろに下がってしまった。何をしろとか、こうすればいいというアドバイスをこれ以上与える気はないらしい。同時に明確な目標も示さない。ただギルドの動きを見極めて、戦えるかどうかさえ判別できればそれでいいと言わんばかりの態度だ。
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