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リメインズ -Remains-
2話 「汝、覚悟ありや?」
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いて2層、3層、4層。安全に固めた筈の帰り道に大量発生した魔物の巣窟内で、兵士は取り残された。

 大軍は機動力が低い。危機に気付いて必死に撤退戦に入るも、当時はテレポットなどという便利なものが無かったために遺産という大荷物を抱えて魔物と正面から戦う事になった。
 そして――第3層で主力が壊滅し、第2層で指揮系統を失った生き残りの兵士たちが全滅し、結局生き残ったのは1層入口で伝令をしていた小隊だけという凄惨な結果に終わった。

「アトラニスタンという新興国だった。全師団がわずか数日で壊滅したことによって市民の怒りがクーデタという形で爆発。(みかど)がリメインズの攻略を決めてから一週間で国はバラバラになった。審査会のによれば決して小さい戦力ではなかったし、練度の低い軍隊でもなかったそうだ」
「一週間で国を滅ぼした、魔障の迷宮………審査会の資料に残ってるってことは、本当だったんだ……」

 学のあるモニカはその話に心当たりがあるのか、槍を抱きしめて驚嘆の顔を露わにしていた。
 一夜で滅んだ国の伝説など珍しいものではない。だが、その全てが世迷言というわけではない。
 リメインズという桁違いな化物がその伝説に関わっているという事実を疑う気は起きなかった。

「分かるか?大軍を放り込むという方法では悪戯に死人を出す……そう頭で分かってはいても、中に詰まっている宝には魅せられる。だから宝を山分けする代わりにリメインズの出入を律する審査会があり、国家や都市に属さない命知らずのマーセナリーが中を捜索するんだ」

 そこで言葉を区切ったブラッドリーの纏う空気が、一気に差すような鋭さを帯びる。

「いいか、マーセナリーってのは――ヒトの屑がやる仕事だ」

 その冷たい声が、セーフハウスに響いた。
 ただの無表情だった瞳に、今だけは本気の意思が宿っている。

「実力がなければ魔物に食い殺されて遺体も残らないなんて珍しい話でもない。命の保証など一切ないし、宝を持ち帰れるとも限らない。完全実力主義と契約だけで成り立つから、大抵の奴が脛に傷を持っている。あるいはイカレた戦闘狂か、命の懸かった酔狂者。そういう連中の集まりだ」
「………っ!!」

 今更になって理解する。審査会が何故自分たちがマーセナリーになることをあれほど渋ったのかを。
 自分たちは「違う」と分かっていたからだ。リメインズとマーセナリーというものが如何なる物なのかを、この集団が理解していないと。

「冒険ギルドなら楽しい冒険だけやっておけ。腕試し程度の浅はかな考えでここに来たんなら――悪い事は言わない。荷物を纏めてとっととここから出て行け」



 = =



 弓に矢をつがえ、放つ。
 体温と言うものがない植物系の魔物には、火と同時に冷気も有効
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