プロローグ改
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っと進み続けようか。
戦っても戦っても満たされないのならば、満たされるまで闘争に浸かれば満足するかもしれない。そのためには生活も食事も人間関係も無用の長物でしかない。
ならば前へ。全てを捨てて前へ。そこにいずれ力尽きて躯を晒す運命があったとしても、俺はそれで構わない。
顔を上げ、下層へと降りるリメインズの大型通路を見やる。
だが、脚を踏み出すことは結局できなかった。
「なにを物欲しそうに下層に思いを馳せてるんですか?」
「………別に」
魔物が跋扈するこのリメインズという空間に似つかわしくない、小鳥がさえずるような少女の声。いつの間に背後に回り込んだのやら、と小さくため息をつく。
振り返れば、そこには少し前から俺のビジネスパートナーを自称するエネルギッシュな少女の姿があった。
片手にいかにも重そうな携行大砲を携えながらも顔色一つ変えないその幼い少女もまた、魔物を狩る存在。自分とは違う理由でここにいる、自分の同類。正式にコンビ契約を結んでいる以上、その契約が切れるまでは彼女の意向も尊重しなければいけない。
少女は返り血を浴びた俺と倒れ伏した魔物をきょろきょろと見比べる。
「今日は返り血の量が少ないですね?最初に出会ったときは全身血まみれのスプラッター剣士だったのに」
「いつも返り血を浴びているわけではない」
「まぁそれはそれとして……下に潜るのなら私にも相談してからにしてくださいよ?弾薬にだって限りがあるんですからね?」
「…………今日はこの辺にして、地上に戻る」
「賛成です!」
ヒトの話を聞いているのかいないのか、にこにこ笑いながら隣に寄り添ってきた少女に俺はため息をついた。
これがいなければ行動に制約など受けないのだが、マーセナリーにとって契約の不履行は活動停止処分などの大きなペナルティを伴う。まだこの職を手放したくはないため、彼女がノーと言えば潜れなくなる。恐らく今潜ったところで、彼女の所持する弾薬数次第で結局引き返すことになるだろう。
仕方なしに剣を収め、上層へ向かう階段へと歩みを変える。少女は俺の背後を、大砲を抱えたままちょこちょこ付いてきた。それが子連れのようでなんとなく複雑な気分にさせられた。
こういうのは、俺の仕事ではない。
「こんなことならコンビ契約など気まぐれに結ぶのではなかった」
「あっ、ひど〜い!!私にとっては真面目かつ一生モノの大切な契約だったんですよぉ!?」
「俺にとってはそうでもなかったぞ。一、二日で音を上げて帰ると思っていたのに……意外としぶとい奴だ」
「あーっ!それが年上の女性に対していうセリフですか!?私より二十八歳も年下のくせにっ!敬いなさい!ちょっとは敬いなさい!」
「わかったわかった。いいから行くぞ」
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