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リメインズ -Remains-
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テンの攻勢に見えたかもしれないその戦い。
 だが、実際には剣で確実に仕留めるタイミングを計っていたに過ぎない。
 ガネンテンは鼻を切ると余計に暴れ狂い、肥大化した足の上にある弱点の胴体を狙いにくくする。だから相手の動きを待っていた。砂埃が荒れ狂う中でじっと、一撃でも食らえば吹き飛ばされる猛攻を凌いだ。

 そして、狙った時がやってくる。
 痺れを切らしたガネンテンが鼻での攻撃を諦め、その骨を砕く脚で相手を踏みつぶそうと突進を始めた。この突進こそがガネンテンの最も厄介な攻撃でもあり――そして、隙でもある。

「ブァァァァアアアアアアッ!!!」
「ぶうぶうと喧しい獣だ。いい加減にその口を閉じてやろうッ!」

 少々の苛立ちが籠った声を上げ、剣を逆手に構え直した。
 意識が下に集中することで、この瞬間だけ奴の上半身防御に対する意識が薄れる。
 楽しくもない戦いだ。何の面白みもない。この連中とは散々戦ったし、全てに勝ってきた。苦戦する要素も負ける要素もなくなった時、戦いは敵を屠殺するだけの作業と化す。

 目の前に迫る巨体を前に、俺は助走をつけて跳躍した。
 両手で握りこんだ逆手の刃に筋力と体重と加速のすべてを上乗せして――その切っ先を、象の巨大な脳天に全力で突き刺した。

「脳梁でもぶちまけていろッ!!」

 骨が砕け、肉が抉れる確かな感触。遅れて噴出した血液が手元を濡らす。

「オォォォアァァァァァァァァァ!!!アア、ア…………」

 一瞬雷に撃たれたようにビクリと震えたガネンテンは、聞き苦しい悲鳴を上げながらゆっくりと仰向けに倒れ伏した。骨の奥に埋まった脳梁をかき乱した剣を力任せに引き抜くと、遅れて粘性の高いどろりとした血液が溢れ出てきた。

 ガネンテンは突進の際、鼻まで動かす余裕がなくなり上半身が無防備になる。その隙を突いてしまえば、こうして即死させることなど容易い。目を半開きにしたままびくびくと痙攣するガネンテンに、熱が冷めるのを感じながら剣の血を払った。剣先から血が糸を引いて飛び、足元の荒れ地を赤いラインで彩る。

 敵を仕留め血が溢れ出たその瞬間だけ、俺は上等な料理を平らげたような充足感を得られる。
 敵と戦い命の掛かった駆け引きをするその時だけ、俺は宝を発掘したような満足感を得られる。
 退屈という名の渇きを癒す闘争の蜜に一人で酔いしれる。

 そんな独りよがりな戦いを続けてどれほどの時間が経ったのだろう。
 このリメインズに潜るのは、乾き続ける心を闘争で満たすため。
 魔物を殺すのは、魔物が死んで困る者がいないため。
 「マーセナリー」を続ける理由など、俺にはそれだけだ。正義感も使命も信念もない、低俗な快楽主義者でしかない。

 ――いっそ地上に戻るのをやめて、この奥の層へず
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