第5部 トリスタニアの休日
第3章 魅惑の妖精のビスチェ
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いく。
ルイズはテーブルの隣の椅子に腰かけていた。
足を組み、髪をいつかのようにバレッタでまとめている。
そして……ルイズの体が『魅惑の妖精のビスチェ』包まれていた。
ウルキオラはただただ、そんな姿を見つめていた。
「いつまで突っ立ってんのよ。ほら、ご飯にしましょ」
照れたような口調で、ルイズが言う。
テーブルの上にはご馳走が並んでいる。
「なんだ?これは」
「私が作ったのよ」
ウルキオラはルイズを見つめた。
「なんだと?」
「ジェシカに教えてもらったの」
そう言って頬を染めるルイズを見て、ウルキオラはそういえば今日はジェシカを見ていないなと思った。
ウルキオラはもう一つの椅子に腰かけた。
「さ、食べましょう」
ウルキオラは徐に料理を口に運んだ。
うん、普通にまずい。
「味はどう?」
ルイズが聞く。
「普通だ」
少し嘘をついた。
「部屋を片付けたわ」
「大したものだ」
「でもって、私はどう?」
肩肘をついて、ルイズはウルキオラの顔を覗き込んだ。
朝の明かりが、窓から差し込む。
爽やかに部屋の中を、朝の光が覆い尽くす。
「トレビアン…というところか」
「……せめて他の言葉で褒めてよ」
ルイズは溜息をついた。
どうやらウルキオラには魅了の魔法は効かないらしい。
なによ。
精々優しくしてもらおうと思ったのに。
ウルキオラの態度はいつもと変わらない。
怒っているような、冷めているような、そんな態度である。
つまんない。
これ着たらバカみたいに求愛すると思ったわ。
そしたら思いっきり冷たくしたのに。
いまさらご主人様の魅了に気付いても、遅いんだから!
何よバカ。
触らないで。
でも、そうね、「やめなさい!」って私の言葉を聞いてくれたのは嬉しかったわ。
少しだけ、ほんの少しだけだけど。
そんな想像をしながら、一日かけて用意したのに、ウルキオラときたらほんとにいつもと変わんない。
つまんないの、とルイズは唇を噛みしめた。
結局のところ、ルイズは気づいてなかった。
ウルキオラはルイズを傷つけまいと、料理の評価を「普通だ」と『気を利かせた』ことに……。
ウルキオラにとっては、信じられない行動なのである。
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