第5部 トリスタニアの休日
第3章 魅惑の妖精のビスチェ
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報告しなきゃ……、とルイズは思った。
そんな風にしてルイズとウルキオラが情報収集をし、女の子たちがチップの枚数を競い合っているところに……、羽扉が開き、新たな客の一群が現れた。
先頭は、貴族と思わしきマントを身に着けた中年の男性。
でっぷりと肥え太り、額には薄くなった髪がべっとりと張り付いている。
供の者も下級の貴族らしい。
腰にレイピアのような杖を下げた、軍人らしき風体の貴族も混じっている。
その貴族が入ってくると、店内は静まり返った。
スカロンが揉み手をせんばかりの勢いで、新米の客に駆け寄る。
「これはこれは、チュレンヌ様。ようこそ『魅惑の妖精』亭へ…」
チュレンヌと呼ばれた貴族は鯰のような口ひげを捻りあげると後ろに仰け反った。
「ふむ。おっほん!店は流行っているようだな?店長」
「いえいえ、とんでもない!今日はたまたまと申すもので。いつもは閑古鳥が鳴くばかり。明日にでも首を吊る許可をいただきに、寺院に参ろうかと娘と相談していた次第でして。はい」
「なに、今日は仕事ではない。客で参ったのだ。そのような言い訳などせんでもよいわ」
すまなそうに、スカロンが言葉を続けた。
「お言葉ですが、チュレンヌ様、本日はほれこのように、満席となっておりまして……」
「私にはそのようには見えないが?」
チュレンヌがそう呟くと、取り巻きの貴族が杖を引き抜いた。
ぴかぴかと光る貴族の杖に怯えた客たちは酔いがさめて立ち上がり、一目散に入口から消えていく。
店は一気にがらんとしてしまった。
「どうやら、閑古鳥というのは本当のようだな」
ふぉふぉふぉ、と腹を揺らしてチュレンヌの一行は店の奥へと進んだ。
しかし、不意にチュレンヌの足が止まる。
一人だけ、客が残っていたのである。
白い肌に、白い服、白い仮面を頭に有し、刀を腰と背に差している。
ウルキオラである。
チュレンヌはウルキオラに向け言葉を放った。
「貴様、早く出て行かんか!」
チュレンヌの激昂を聞いた取り巻きの貴族が、一斉に杖をウルキオラに向けた。
「何故俺が貴様のために出て行かねばならん?」
「なんだと?」
ウルキオラの挑発的な言葉に、スカロンとジェシカ、女の子たちは戦慄した。
そこへ、お手洗いから戻ってきたルイズが現れた。
「なに、どうしたの?」
ルイズは近くにいたジェシカに尋ねた。
「このへんの微税官を務めているチュレンヌって男がやってきて、さっきまでいた客を追い払ったんだけど、ウルキオラが立ち去らないもんだから因縁つけてんのよ。しかも、ウルキオラは出ていく着ないみたいだし……」
そりゃそうだ、とルイズは
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