第5部 トリスタニアの休日
第3章 魅惑の妖精のビスチェ
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「妖精さん達!いよいよ、お待ちかねのこの週がやってきたわよ!」
「はい!ミ・マドモアゼル!」
「張り切りチップレースの始まりよ!」
拍手と歓声が、店内に響き渡る。
「チップレース?」
店の角に座っているルイズは初めて聞くワードに首を傾げた。
「誰が一番稼げるかのレースでもするのだろう」
その問いに、向かいに座るウルキオラが淡々と答えた。
「ふーん」
ルイズはそっけない返事を返した。
「さて、皆さんも知ってのとおり……、この魅惑の妖精亭が創立したのは今を去ること四百年前、トリステイン魅了王と呼ばれた、アンリ三世陛下の治世の折。絶世の美男子と謳われたアンリ三世陛下は、妖精さんの生まれ変わりと呼ばれたわ」
スカロンはうっとりした口調で語り始めた。
「その王様は、ある日お忍びで街にやってきたの。そして、恐れ多くも、開店間もないこの酒場に足をお運びになったわ。その頃この店は鰻の寝床亭という、色気もへったくれもない名前でした。そこで王様はなんと!であった給仕の娘に恋をしてしまいました!」
それから悲しげに、スカロンは首を振った。
「しかし……、王様が酒場の娘に恋など、あってはならぬこと……。結局、王様は恋を諦めたの。そして……、王様はビスチェを一つお仕立てになってその娘に贈り、せめてもの恋のよすがとしたのよ。私のご先祖様はその恋に激しく感じ入り、そのビスチェにちなんでこのお店の名前を変えたの。美しい話ね……」
「美しい話ね!ミ・マドモアゼル!」
「それがこの魅惑の妖精のビスチェ」
がばっとスカロンは上着とズボンを脱ぎ捨てた。
遠目に見ていたルイズは、今度ばかりは、おえ、と胃液を吐いた。
ウルキオラは怪訝な顔をして目を逸らす。
スカロンが体にぴったりとフィットする、丈の短い色っぽい、黒く染められたビスチェを着用に及んでいたからだ。
「今を去ること四百年前、王様が恋した娘に贈ったこの魅惑の妖精のビスチェは我が家の家宝!このビスチェには着用者の体格に合わせて大きさを変えぴったりフィットする魔法と、魅了の魔法がかけられているわ!」
「素敵ね!ミ・マドモアゼル」
「んんんん〜〜〜〜!トレビアン!」
感極まった声で、スカロンがポージング。
そのとき……、驚いたことに、ルイズの中で、まあまあじゃないかしら?という感情が浮かび上がった。
スカロンに対する好意というか、そんな気持ちである。
あんなに気持ち悪い姿なのに、あれはあれで、ありなんでは?などと感じ始めた。
ルイズは、はっ!と気づく。
これが魅了の魔法の正体なのか!と。
しかし、スカロンのその姿はどうにもマイナスなので、「まあまあいける」ぐらいの評価にし
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