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乱世の確率事象改変
ただいまはまだ遠く
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った後の明の背中。その先には……鎌が突き刺さって息絶えている一人の兵士が居た。
 コロリ、とその兵士の手から落ちるのは吹き矢の残骸。

「腐れた気配なんかあたしにはすぐ分かるんだよバーカ。あたしに気付かれずに本初を殺したいなら、孫呉の褐色猫狂いでも連れて来いってーの」

 困惑が場に広がるも、華琳と秋斗が打ち込んだ静寂の楔によって兵士達は動けなかった。

「猪々子、斗詩……本初を助けたいんだったらあんた達が助けな。でも逃げたらダメ。反抗してもダメ。あんた達はさ……袁家の二枚看板で、両腕なんでしょ? だったら何したらいいか分かってんじゃない?」

 向ける笑みには昏さは無く、憎しみも見当たらなかった。
 茫然と見つめるも直ぐに取り込み、猪々子は警戒を露わにして周りに意識を尖らせていく。斗詩は……嬉し涙を流しながら、麗羽に声をかけ始めた。

 ひょこひょこと三人から離れて行く明は、殺した兵士の目の前で立ち止まり、ひょいと吹き矢を手に取った。
 ぐるりと兵士達を見回してから、あらんばかりの殺気を放ってその暗殺道具を皆に見せつけるように掲げ上げ。声を紡いだ。

「次になんかする奴が居たら……あたしとお前らの中に潜ませてる張コウ隊で皆殺しにしてやるからね。あたしと張コウ隊は別にお前ら全員と戦っても構わないんだよ。首だけになっても殺し尽くしてあげる。
 それが嫌なら変な動きしようとする奴を殺しな。王の選択を見守るだけなんて……お前らは何の為に戦った兵士だ? クズ共」

 それだけ言ってくるりと背を向け、彼女は麗羽の元に歩いていく。

――やっぱり上層部のネズミが混ざってたかー。

 敗北した王が死んで当然だというわけでは無く、勝者の差配によっては生き残る可能性も確かにある。
 そして今回の戦のような場合、麗羽に全ての責を負わせてしまいたいモノが居る。

“反逆は当主個人の暴走によって行われた”

 そう結論付けて血筋の安定を図りたい……それは歴史上では良くあるトカゲのしっぽ切りのような思考。
 現代で言えば、会社の上司が一人の部下に全ての責任を押し付けた上で解雇するようなモノである。
 血筋を存続させる事を最優先とするならば、袁家は麗羽に生きていて貰っては困るのだ。

 今回の事とは別、通常の戦争であっても同じではある。
 当主の身柄を捕虜とされた場合、服従と共に大きな何かを対価としてその身柄を取り戻さなければ家の名が傷つく。当主を見捨てる家の信用は失墜し、繁栄など全く望めないのだから。
 それなら内密に殺してしまった方が得、という考え方もある。
 孫呉に息づいている“血筋の一人でも生き残っていれば勝ち”の思考と同質ではあるが……誇りと人命を度外視した非情にシビアな駆け引きの一つ。
 今回の袁家が孫呉
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