ただいまはまだ遠く
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為に死んだ夕を信じろ。夕の望んだ世界には、お前達の幸せも入ってんだ。だから俺にもその想いを繋がせて欲しい……ってことだから此処からは新しい賭けをしよう。お前はどっちを選ぶ? 救いたいモノの為に縋り付いてでも生きるか、意地を貫き通して死ぬか』
騙された相手だ。しかし夕の真名を呼んだ彼の事を、猪々子は信じる事にしたのだ。
あの時の涙には悔しさもあった。だが、明と夕が自分達の幸せを願ってくれたと聞いて、自分達三人を許してくれるように思えたから嬉しくて、涙を流した。
麗羽の命を救う対価は自分の命を秋斗に捧げる事。元より彼女の為に捨てていた命だ、惜しくは無かった。
――救えるなら、生きれるなら、命を繋げるなら、きっと誰だって幸せになれる。姫は一人じゃダメかもしんない……でも、あたいと斗詩が支えるから、絶対に幸せにしてみせる。
結局彼女は全てが黒に染まった徐晃隊のようにはなれなかった。
完全には狂えない半端モノ。薄暗がりの空に憧れるだけで、昼の明るい空を望んでしまう。
そんな彼女だからこそ、秋斗は賭けた。
ルーレットでベットする色は赤と黒だけでは無く、一つだけ緑がある。彼が駆けたのは大穴に等しい。されども幾重にも張り巡らせたイトを以って、確実に成功させるイカサマ有りの賭けとして成り立っていた。
心が折れて、這う事を辞めて絶叫する麗羽。
その姿を目に居れた途端に彼女と斗詩はもう我慢出来ずに駆けだした。
手を貸すなと言われても、彼女達二人がそんな事を出来るはずも無く、抑え切れない感情を溢れさせて麗羽の元に向かった。
――姫の心が折れたらあたいが連れて行けばいいってことかよ、徐公明。
猪々子はこの時に彼の思惑に思い至る。止めようともしないのがいい証拠だった。動揺に動けない白馬義従は彼女達二人を止めず、秋斗も止めろとは命じていないのだ。
だが、彼の言葉を理解したが故に、明が鎌を振り上げた事は完全に予想外。自分達に向ける視線はいつも通り妖しく艶やかで、出された舌は扇情的に過ぎた。
もしかしたら、明は麗羽を殺したかったのかもしれない。
そんな予測が頭を埋めて、
「姫ぇぇぇ――――っ!」
反射的に出た叫びは喉の奥を張り裂く程に大きく。手が動かなくとも、その凶器を身で受けてやろうと猪々子と斗詩が麗羽に覆いかぶさった。
残ったのは風切り音と、人の肉が千切れる音。
ただ、何時まで経っても身体に痛みは来なかった。
誰かが声を上げる前に華琳が手を上げた事によって、そして秋斗が剣を掲げた事によって、兵士達が武器を大地に突き立てる音が響いた。
「あ……れ?」
「なんで……私達、生きてる……」
静寂の中、そんな言葉を発した彼女達の目に移ったのは……大鎌を振り切
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