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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第22話 一蓮托生
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腹に『自分の傍によるな。』そう言わんとするかのような、脅迫にも似た言葉。
 その二つの言葉は一見矛盾するようで、その実何一つ矛盾はしない―――が、そこまでの事をする真意がわからない。


「忠亮さんは……貴方は何を求めているんですか――――」
「己が求めるものはたった一つだ……ただ一度の勝利と、それによって齎されるたった一つの笑顔(けっか)――――俺は、守り抜けたのだという結果だけが欲しい。」

 ああ、そうか。―――きっと、彼は守りたかったものを守れなかった経験があるのだろう……何度も、何度も
 そう、何度もだ――――そうやって、苦渋と辛酸を舐めさせられ続けた末に、心を頑なにした、嘘や傲慢や楽観や偽善が人を殺す様を見せつけられ続けたのだろう。
 しかし、その本質は――愛しき存在をその腕で守りたい。その純粋にして強烈な渇望こそが彼の本質。
 ……世界の優しさなんて不確かなものを信じ無いがゆえに彼は誰よりもやさしい。

 他力に頼らず、己の願いは己の力で完遂するという気概と覚悟―――だからこそ彼は孤高だ。

 だけども、彼もまた――――光射す未来を望んでいる。

「大層な理想も、耳触りがいいだけの綺麗事も、見せかけの平和も要らん―――俺は、俺の全てを燃焼させて疾走させたい。」

 戦いを求める修羅―――だが、無暗な破壊も闘争も剣鬼は望まない。
 それでは獣にも劣るから、修羅の矜持はそんなに安いものではない。

 戦う理由、戦う本能に突き動かされるままにそれを探していた。無意味な闘争も、無意味な平和も要らない……求めるはたった一つ、愛しき者の笑顔が咲く未来をつかみ取る為の戦い。

 ――きっと、それは有り触れた願望。
 愛しき者の微笑む未来、自らの全てを出し切る事。きっと、それは誰しも必ず一度は抱く渇望だろう。
 だが、彼のそれは――――純粋に思いの質量が違う。願いと渇望が混じり合って、引火直前の火薬に成ってしまっているかのように見える。

 唯依はそんな蒼を纏う青年に、まるで花火のように一気に燃え尽きてしまいそうな危うさを感じた。

「―――勝手を言わないで下さい!」

 語気強く、唯依は衝動を口にしていた。初めて逢った時と同じ憤りを彼女は今、胸裏に抱いていた。

「貴方は勝手に走り抜いて、燃え尽きて満足かもしれません―――だけど、私は…そんなことをされても全然嬉しくありませんっ!
 死ぬことなんて目的にしないでください、生きることを目的にしてくださいっ!!」

「分かってないな、勝つのと生きることは別なんだ。―――俺が望むのは勝利、ただそれだけだ。」

 勝つこと、生きること。この二つは似て非なる存在だ。
 共により良き明日を望むために必要なこと、だが何方に比重を置くかでこうも相容
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