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リリなのinボクらの太陽サーガ
”彼女”
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現化した一人の少女を見つめる。サバタさんとほぼ同じ年代で赤いワンピースを着た彼女は、物憂げな瞳を私に向けていた。

「月村すずか……あなたの心は今、サバタさまと同じ月下美人に昇華しました」

「月下美人……」

それは確かラタトスクが言っていた力だったような……。でもこんな所で目覚めて良い力なのかな? これは……ラタトスクの計画通りじゃないの?
私から視線をずらした彼女は私を抱えている彼、サバタさんの顔を見て慈愛に満ちた笑顔を見せた。

「サバタさま……よくご無事で……」

「……カーミラ。おまえも来ていたのか……だが、何故おまえだけはヴァナルガンドと分離しなかった? ヴァナルガンドと同化していた俺はかの世界で目覚めたのに、どうしておまえの魂は未だにここに捕らわれているのだ……!」

サバタさんにカーミラと呼ばれた少女は、その言葉を聞いて目を伏せる。

「サバタさま……悲しまないで下さい。あの時、時空の歪みに飲み込まれた衝撃を利用して、私はあなただけでも自由の身にしようとしました。私がいなければ……ヴァナルガンドを石のまま、封印しておく事はできません。ですがあなたは……あなた達はまだ死ぬべきではありません。あなた達にはまだ、あなた達を信じる仲間が……大切な家族がいるのですから。過去に捕らわれるのではなく、未来を生きてください」

「だがおまえはどうなる! 一人このまま……破壊の獣と共に永遠を眠り続けるというのか!? それがおまえの……未来だというのか!!」

「今、私の魂はヴァナルガンドと共にあります。いずれは私も……ヴァナルガンドそのものと成るでしょう」

「バカな!!」

「だいじょうぶ……私は決して負けません! あなたと出会えたこと……あなたが与えてくれたもの、それを想うだけで……私は戦える! たとえその相手が破壊の獣であろうとも、たとえその戦いが未来永劫に続こうとも、この想いだけは……決して壊せない!!」

「カーミラ……」

サバタさんが沈痛そうに苦々しい表情で俯き、そんな彼をカーミラさんは悲痛を秘めながらも決意のある眼差しを送っている。彼に抱えられている私だからわかる。サバタさんとカーミラさんが互いを大切に想い合っていることを。真に愛し合っていることを。そして……この愛が悲しくも実らなかった結末に、私とアリシアちゃんは胸が痛んだ。

「サバタさま……あなたに渡したいものがあります」

そう言ってカーミラさんが手を広げて出したのは、ジグザグの模様が刀身に走った一振りの大剣だった。「もう大丈夫です」と私は彼に伝えて降ろしてもらい、サバタさんはカーミラさんが出した大剣を受け取る。

「私が切り崩したヴァナルガンドの力の一端を秘めた剣です。同じ力を持つこの剣ならヴァナルガンドにダメージを与
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