”彼女”
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葉が羅列している。私の心にある闇、その破壊衝動を呼び覚まそうと働きかけているのだろう。だけど私の破壊衝動は自分でも驚くほど静かに抑えられている。その理由はきっと、私の手を掴んでくれている彼の存在があるからだ。
「気をしっかり持つんだ、すずか。絶対にヴァナルガンドの意識に飲み込まれるな」
「う……! は、はい……!」
一片の光も見当たらない暗闇の中、破壊衝動を堪えていて動けない私をサバタさんが抱えて歩いている。最初意識がはっきりした時、ここには二人しかいない、と思ってたけどそうでは無く、奇妙な事にサバタさんにはもう一人の連れがいた。
「ねぇお兄ちゃん……ここから出る当てはあるの?」
「さあな。隠す必要も無いから正直に言うが、二度と出られない可能性の方が高いぞ、アリシア」
「うにゃ〜! そんな事言わないでよ、なんか気が滅入っちゃうじゃん! もぉ〜!」
「アリシアちゃんって……実際に会うとこんな状況でも元気な子だったんだね……」
「こっちもこんな方法でお兄ちゃん以外の人と話せる機会が訪れるとは思わなかったけどね、すずか」
そう言って私たちの前を進む金髪の少女は空元気の笑顔を見せてくる。詳しい経緯はともかく、幽霊のアリシアちゃんは消えそうだった所をサバタさんに助けられて、成り行きでそのままここまで来る事になっちゃったみたい。でも彼女が無理やりにでも笑わせてくれるおかげで、私はまだヴァナルガンドのプレッシャーに抗う事が出来ているから、正直来てくれて助かっている。幽霊と話が出来ている時点で色々おかしいけど、それで希望が残るならむしろ構わない。
ハカイ……! ハカイ……! ハカイ……!
「ッ……まだ……耐えられる……かな……?」
「ああ、弱気にはならない方が良い。弱音は自分を小さくする」
「ってかさっきからハカイハカイうるさいよね! 絶対存在のくせにそれしか言えないのって思うよ!」
「ふふ……そうだね、アリシアちゃん」
だけど……このまま脱出する希望が何もないと、気を強く保ち続けるのも限界がある。もしこの破壊衝動に屈してしまったら、私たちは破壊の獣と化して世界を壊してしまう。そして壊れた世界を前にして、死ねないまま永遠の地獄を生き続けなくてはならなくなる。それだけは絶対にイヤだ。この世界は嫌な事や怖い事も多々あったけど、それ以上に大切な人達と楽しく過ごした思い出がある。それを壊したくなんかない。
ギュッと目をつぶり、皆で生きて帰れる事を願う。すると私たちの前方で真っ暗な世界の中を貫く一筋の優しい光が現れ出した。
「あれ? 何だろう、この光?」
「これは……ッ、この気配はまさか!?」
何か思い当たる拍子があるサバタさんが動揺を隠せないまま、徐々に光に照らされて具
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