現出
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呼ばれるわたくしにも、絶対存在であるヴァナルガンドを操る事など出来はしない。そのためにわたくしはかつて世紀末世界であなたの月の巫女の力を利用しようとした。それはあなたもよく知っているでしょう?」
「ああ、忘れがたい悪夢だ。だがそれがどうして月村すずかと繋がる? ヴァナルガンドを操ろうとするなら本来、月下美人の力を持つ俺を狙うはずだ」
「確かにその考えは間違いではありません。しかし……前回、あなたは贄に捧げた後もわたくしの支配にずっと抵抗し続けていた。それは結果的にヴァナルガンドを完全に操る事が出来ない可能性に繋がります。それではわたくしの野望は真の意味で実現できません。しかし世紀末世界では月光仔の血を持つ者が暗黒少年のあなたと、太陽の力を操るあなたの弟太陽少年ジャンゴしかいませんでした。ですが……この世界の夜の一族、月村には世紀末世界の月光仔とほぼ同じ血が通っている! そして月下美人に最も近い素質を持ち、かつわたくしの支配に抵抗できない脆弱な意思を持つ者、その条件を満たすのがこの月村すずかなのです」
ラタトスクの語った内容にクロノ達は動揺し、恭也はアースラに残して来た忍たちの身を案じながら憤っていた。そして俺はこれまでヴァンパイアが現れた場面の共通点を思い返し、気づいた。そこには必ず月村すずかがいた事を。という事は最初から……俺が目覚めたあの夜からラタトスクはヴァンパイアを利用して、彼女を狙っていたのか!
「……月村すずかを俺の代わりにヴァナルガンドの贄に捧げ、破壊の王として君臨する計画。それが貴様の目的か!」
「ご明察です。そして……抗う力もとうに失ったあなたではもう止められません。計画は既に最終段階に入っているのですから!」
ヴァナルガンドの方に振り返ったラタトスクがすずかを抱えている腕を振り上げる。ヤツがこれからやる事を察した俺は全身に鞭を打ち、立ち上がる。
「た、助けて!! サバタさぁあああああん!!!」
「くそっ、やらせはせんッ!!!」
ラタトスクはすずかをヴァナルガンドに向けて放り投げ、俺は必死に助けを乞うすずかの手を目掛けて走る。だが走りだけでは届かないと判断した俺はジャンプして飛び込み、彼女に向けて手を伸ばす。そして俺と彼女が出すその手が重なり合った瞬間、
ギィィィイィィィイィィィッッッ!!!!
二人とも、破壊の獣へ取り込まれた……。
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