暁 〜小説投稿サイト〜
戦闘城塞エヴァンゲリオン
第1話Bパート『負け犬にウイルス』
[1/11]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
それは、彼が第三新東京市を訪れる前日のこと。


  ◇  ◇  1  ◇  ◇


死のう。いや、死ぬのだ。死なねばならぬ。

四畳半の部屋の天井から垂らしたビニール紐をみつめる。
彼の身長より高い位置に、輪にした先がある。

適当な箱に載って首を輪に通し、箱を蹴る。


…ビニール紐は強度に難があったようだ。
落下した際にぶつけた向こう脛を押さえて
のた打ち回りながら思う。

川村ヒデオは、今年20歳になる。
高校卒業を機に就職活動のため上京、新東京の片隅のこのアパートに引っ越して来た。

履歴書を送った会社は三十数社にのぼるが。その、すべてに書類選考での不合格を言い渡された。

彼はこの2年、
職に就いておらず、就職に向けた活動をしておらず、また当然、学生でもない。
つまりは、ニート。


彼の生活を支えていたのは、
家を出るとき父親に渡された彼名義の通帳。

彼の血縁上の父親から振り込まれていた養育費から、
学費などを支払った残りを貯蓄してきたものだという。
それなり、まとまった金額になっていた。

しかし、その残額は0になった。
享楽的な生活を送ったわけでも、不測の事態で失ったのでもない。

ただただ、収入のあてもなく使い減らしていったのだ。
2年持ったのは上出来なほうだろう。


いまさら、両親に頼ることはできない。
18歳まで不自由なく育ててもらった恩がある。

血縁上の父親は、もう他人だと割り切っている。

であるから――

死ぬのである。


しかし、困った。
確実かつ、あまり苦しくなさそうだと選んだ手段が潰えた。

途方にくれた、朝。


彼の朝はニートにしては早い。

夜は電気代をケチって早く消灯する。
夜が早いから朝も早いのだ。

また平日の昼間から出歩けば、彼の容貌では悪目立ちしてしまう。
職務質問を受けること数え切れず、
子供連れの親、年頃の婦女子にあからさまに警戒されると
心を圧し折られる。

自然、早朝あるいは日が落ちて以降にしか外出しない。


死ぬ方法を求めて特に当てもなく、部屋を出た。
平均的な出勤時間帯より早い時間で人通りは少ない。

徒歩5分以内のコンビニにふらりと立ち寄る。
この時間なら、ヒデオの顔を見知った深夜早朝バイトの店員が居るので
過度にビビらないで対応してくれるのでよく利用していた。
今は懐に余裕がないので、雑誌をぱらぱらと立ち読みするにとどめる。

もちろん、よりよい自殺の方法だとか最新自殺トレンドのような情報は見つかるわけがない。

雑誌に掲載された広告ページに目が留まった。
ヒデオ自身、興味がそそられるわけでもないが、
この一年ばかり、
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ