憑依
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く!!!」
暗黒チャージ開始! 怨み神はジュエルシードの膨大な魔力が吸収した死者の想念が強引に結合されて一時的に実体化してしまったものだ。ならその元凶さえ絶てばいい。幸か不幸か暗黒物質は魔力素を喰らうため、一時的に暴走を止める働きがある。それを最大限利用させてもらう。
掌に小さなブラックホールを発生させ、ジュエルシードから溢れて暴走している魔力を全て吸い込む。それに応じて具現化していた思念が昇華されていき、火傷の痛みや怨み神がまとっている粘土状の物体も消滅していく。彼らを縛り付けていた魔力を消し去っているのだから、死者があるべき姿に戻って行くのは当然の摂理だった。
シュゥゥゥゥゥゥゥ……!!
煙が立ち上って怨み神から姿が薄らとしたおぼろげな幻影が放出される。先程まで荒れ狂っていた彼らを幻想的に照らす月の光が温かく包み込み、一際強い光が一瞬発せられると、ついに怨み神は浄化された。後に残ったのはおれの手にある元凶の青い宝石と、発動元として最初に暴走させられた一人の幽霊だった。
「…………?」
何かの偶然なのか、この幽霊はフェイトそっくりで彼女を幼くした姿そのものだった。その理由については不明だが、暴走の影響で魂を摩耗してしまった彼女は天に昇る事も出来ず、消えかけのロウソクのようにその存在が蜃気楼みたく揺らいでいた。
『そこのお兄ちゃん……怪我させちゃって、ごめんなさい。それと……ありがとね、街を壊す前に私を止めてくれて……』
「そうか。………何か言い残す事はあるか?」
『それって……遺言みたいな感じ?』
「似たようなものだ。それで、どうなんだ?」
『う〜ん……私、何か凄く大切な事を伝えたかったはずなのに、それが何だったのかさっぱり思い出せないんだ。だから何を言い残せばいいのか、全然わからないよ……』
「まあ、魂が損傷しているからな、記憶に欠落が発生してもおかしくない」
『そっか。私、このまま消えちゃうのかなぁ……?』
「確かに、このままでは死者の世界に行く事も叶わず消滅してしまう。そうなった先にあるのは、生きる事も死ぬ事も許されない永遠の無だけだ」
『無…………それはイヤかな…………うん、イヤだ』
「………」
『イヤだ、イヤだ、イヤだ……怖い、怖い! 消えたくない……消えたくないよぉ! ねぇ、お兄ちゃん! お願い……私を……私を助けて!!』
もう身体の半分が消えてしまっている幽霊少女が、幻の涙を流して懇願する。彼女の助けを求める手は幽霊である以上、普通の人間なら絶対に掴めないものだが……暗黒少年にして月下美人のおれなら掴む事ができる。
「フッ………仕方ないが叶えてやろう、その願い」
『……へ!? ほ、本当にできるの!?』
「ああ。おまえの
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