邂逅
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い、私や私の大切な人達が生きているこの街を壊されたくないから!」
そう言い切った少女の目は先程の悲痛に満ちた状態と違い、曇りなき空のごとく澄み渡っていた。それは自分が戦う理由を見つけた者が持つ眼。甘いかもしれんが少女はこの時、一つの壁を乗り越えたのだ。
「……それが、おまえなりの覚悟か」
「はい!」
「そうか……己の覚悟を決めたのなら、曲げる事無くそれを信じぬけ。いざという時、それがおまえの力となる」
「ッ! はい!!」
威勢よく返事をした少女におれは用が済んだとばかりに背を向け、当初の目的を果たしに立ち去「ま、待って下さい!」ろうとしたら、少女に呼び止められた。
「あの……あなたの名前を教えてくれませんか?」
「……サバタ」
「サバタさん……助けてくれたり励ましてくれて、ありがとうございます! あ、私は高町なのはって言います!」
「………そうか」
「ぼ、僕はユーノ・スクライアで―――」
「悪いがおれは急いでるんだ。家で風邪薬を待っている奴らがいるのでな」
「あ、それはなんて言いますか、誠に申し訳ありませんでした……」
「その人たちにお身体を大事に、と私からもお願いします」
「………ああ」
その後は呼び止められることも木の根に遮られることもなく、薬局へたどり着けた。風邪用ソフトカプセルの箱を購入した後、急ぎ足ではやての家に戻る。
やれやれ、ジュエルシードの妨害で余計な時間がかかった。おれが見ていない間にあいつらの容体が悪化していなければいいのだが……。
「ただいま」
『支えてるのは左手だ、利き腕じゃないんだぜ』
「へぇ……この男、かなりの力持ちなんだねぇ」
「あわわわわわわ……!」
「二人とも【コマンドー】見るの初めてやったんか。この筋肉を知らんのは多大な損やけどまあ古い映画やし、今の時代じゃ見てない人も逆にいるんやろうな。あ、おかえり〜サバタ兄ちゃん!」
先日、録画した再放送の映画を見ていたはやて達の姿に、どっと肩に疲れが圧し掛かってつい嘆息した。考えている事はわざわざ言わなくても伝わっており、彼女達は3人そろって気まずそうな顔をしていた。
「あ〜ほら? 私ら朝からずっと寝てたんやし、いくら風邪ひいてても寝過ぎて目が覚めちゃうやろ。せやから堪忍して〜な?」
「ごめん。ちょっとのつもりで見たら結構面白かったから、つい……」
「やる事が無ければ無いで、なんか暇だったんだ。それにサバタが帰って来るまで案外時間かかってたし……」
それはジュエルシードのせいだが、どちらにせよ、おれが戻るのが遅くなったという意味に変わりはない。なのであまり強く言わない事にした。
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