暁 〜小説投稿サイト〜
渦巻く滄海 紅き空 【上】
八十三 音の五人衆
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
てる。
(てめぇごときが気安くナルトと呼ぶんじゃねーよ)

けれど君麻呂の怒りを鎮めた手前、自身も計画の為にぐっと堪え、多由也は淡々とした声でサスケに問うた。
「―――お前の目的は何だ?」
唐突な問い掛け。ハッと顔を上げ、胡乱な眼つきでサスケは己を取り囲む五人を見渡した。

「この生温い里で仲間と傷の舐め合いか?」
「くだらない絆や繋がりとやらを大切にして」
「そして、ただの並みの忍びとして生きるのか」

多由也に続いて君麻呂以外の少年達が次々と語り掛ける。四方から声を揃えての轟々たる非難に、サスケは顔を伏せた。
項垂れた拍子に露となるサスケの首元。其処に標された呪印を見下ろしながら、多由也はだしぬけに切り出した。

「呪印で力を得た代わりに、大蛇丸様に縛られている。ウチらにはもはや自由など無い…―――何かを得るには何かを捨てなければならない」
そこで言葉を切った多由也に続いて、少年達が口々に畳み掛ける。

「確かにこの里は他里に比べりゃ、平和そのものだ」
「だが平和とは安らぎを与える反面、野望を打ち砕く」
「お前は平穏を得ると同時に、断念させられているんだよ」

最後の言葉尻を捉えたのは、それまで沈黙を貫いていた君麻呂。ぽつり、独り言のように呟く。
だが彼の一言は最も強くサスケの心を揺さぶった。
「…―――力への渇望をな」

強くなりたい一心で今まで生きてきたサスケ。だからこそ、今耳にした彼らの意見に狼狽する。
木ノ葉の里自体が自分にとって枷でしかないのかと。


サスケの動揺を目敏く察した多由也が続け様に焚き付ける。迷い、悩む時間をサスケに与えるつもりなど彼女には毛頭無かった。

「何かを得るには何かを捨てなければならない」
再度同じ言葉を述べ、じっとサスケを見据える。
ゆらゆら揺れる五つの影。周囲のそれらは徐々に伸び、まるで逃げ道を塞ぐようにサスケの身を覆い尽くす。

「力が欲しいか?強さを手に入れたいか?ならばお前は何を犠牲にする?」
辛辣な言葉を次々と浴びせられ、サスケは眼を逸らす。けれどそうしたところで、周りからの怒涛の詰問は止みはしない。
それどころか、「犠牲無しに力を得ようなどと甘ったるい考えは捨てろ」と付け加えられ、サスケは益々項垂れた。

「平穏を求めるのならば、野望は諦めろ。だが力を望むのなら、平和が代償だ……意味、わかるだろ?」
「――――俺に木ノ葉を捨てろと言うのか」
そこでようやく、サスケは顔を上げた。五人の少年少女達が一様に頷く様を瞳に映し、眉を顰める。

孤立無援。まるで四面楚歌の如きそれは甘美な誘いであると共に、木ノ葉との絶縁への道標でもあった。
大切な仲間達がいる里と、強大な力を得る機会。双方に板挟みされ、サスケの眉間の皺がより一層深ま
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ