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駄目親父としっかり娘の珍道中
第72話 俺の戦い、私の戦い
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るであろうか。
 それとも、あの世に行っても人を斬るだけか?
 
「よぉ、お苦しみの所悪いなぁ」
「あぁ、構わんよ―――」

 暗がりの中で人知れず過ごしていた筈ではあったが、こいつにだけは看破されてしまったようだ。相変わらずこの男は油断ならない。
 生憎目が見えない為に男の素顔は分からないが口調や肌で感じる威圧感から察するにこの男の危険性は自分以上である事は想像出来た。
 今、自分はこの男、高杉晋介の元で人斬りをしている。この男の懐刀としてひたすらに人を斬り続ける。それが今の自分の望みであった。
 だが、少々火遊びが過ぎてしまったようだ。背後から感じる高杉の威圧感の中には明らかに彼が不機嫌そうにしている感じがした。
 
「報告は聞いた。やるじゃねぇか、あの桂や銀時を手玉に取るなんてなぁ。お陰で良いデータが取れた。それだけは褒めてやるよ」
「ほぅ、てっきり折檻でもされるかと思ったが、これはこれは痛み入るねぇ」
「ま、木島の奴ぁ相当苛立ってただろうが、お前にそれを預けたのは他でもない奴だ。最初からそうなる事はある程度は予測出来た。其処は問題じゃねぇ」
「……じゃぁ、何が問題なんだい?」
「お前、大事な客人に手ぇ出したそうだな―――」

 高杉の声が急に強張った物になった。どうやら彼が不機嫌なのは其処だったようだ。
 あぁ、あの時のガキの事か―――
 それを思い出すと、岡田はふと、自分が笑っている事に気づいた。まさか、江戸を火の海に変えようとしている狂気の男が女、それもまだ年端も行かない子供に手を出した事に怒っている。それが不思議とおかしく思えたのだ。
 
「おまけにそいつの髪を毟ったとか、髪は女の命だって教わらなかったのか?」
「生憎、人斬りをやってるとそう言う事とは無縁なんでねぇ。俺にゃぁそう言うデリカシーじみたのはないんだよ」
「そうかい。まぁ、今回は不問にしてやる。ただし条件付きでな」
「条件? それはどんな条件だい?」
「今回の火遊びの尻拭いをしろ。てめぇが散々江戸の町で暴れ回ったせいであちこちで騒ぎが起こってる。恐らく、此処が嗅ぎ付けられるのも時間の問題だろう」

 其処まで言われた時点である程度察する事は出来た。要するに間も無くこちらに来るであろう刺客を討ち取れ、と言う事なのであろう。
 それならば寧ろ願ったり適ったりと言った所だ。丁度この刀も飢えていた所だし、そいつらの血でも吸わせて落ち着かせれば一先ず安心出来るだろう。
 
「分かってると思うが、今回だけだ。次同じ真似したら、そしたら容赦なくてめぇを【そいつ】に喰わせる。そいつの餌になりたくなかったら火遊びは程ほどにするこった」
「ふふふ、こいつの餌か―――それも悪くねぇな。にしてもこいつぁ良い業物だねぇ。あれかぃ? かつて攘夷戦争最
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