暁 〜小説投稿サイト〜
フェイト・イミテーション ~異世界に集う英雄たち〜
ゼロの使い魔編
第一章 土くれのフーケ
土くれのフーケ 
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方も向いた。

「ねえカケル、だったら貴方のことを聞いてみたいな〜。」
「・・・・・・・・んあ、俺?」
「どうしたのカケル?さっきからボーっとしちゃって。」
「いや、大丈夫だ。それで?俺のことを聞いたってつまらないぞ。」
「いいのよ。ダーリンの話なら何でも構わないわ!」

 架にずずいっと詰め寄るキュルケに、ルイズの歯ぎしりが聞こえてきた。これ以上こんな空気を感じたくないので「分かった分かった・・・。」とため息まじりに応じた。
 しかしよく見ると、キュルケだけではなくルイズも本を読んでいるタバサも御者のためこちらに背を向けているロングビルも聞く気は満々だった。
どの道逃げ場はなしか・・・。

「それで、何を聞きたいんだ?」
「そうね〜。とりあえず生い立ちからかしら。」

 またそんなアバウトな・・・。と架は思ったが、彼の答えは十分にその場の人たちの興味を引くものだった。

「そうだな。実は俺は、自分がどこで生まれたのか覚えていないんだ。」
「「「は?」」」

 ルイズ、キュルケ、ロングビルが間抜けな声を出した。タバサも声はあげなかったが、本から目を離し架の方をじっと見ている。

「覚えて・・・ない?」
「ああ。自分の国も家族も分からない。気が付いたら、知らない施設の中にいたんだ。」
「施設?どんなところ?」
「それは・・・」

 言いかけて架は口を噤んだ。あんな場所のことは話さない方がいい。彼女たちには少し刺激が強すぎるかもしれない。なので「まあ、いろいろあってな・・・。」と濁した。

「そこで、まあ今の妹に出会って二人でその施設を抜け出したんだ。それがまあ七歳の時かな。」
「な、七歳!?」
「ああ。でも長い間施設内で過ごした俺たちは、外の世界へ飛び出したもののロクに生き方を知らなかった。お金なんてあるはずもなく、それをどうやって手に入れるかも分からない。着るもの、食べ物、住む場所全てに困った。その時は逃げ出したことを後悔したな。罰を受けることを覚悟して、戻ることも考えた。だけど・・・」

 架は思い返していた。自分と同じ、あるいは自分以上に辛いはずなのに、「大丈夫。」と言って笑ってくれた彼女のことを。
 聞いた時もあった。「逃げ出したことを後悔してないか。辛くないか。」と。
 答えはこちらが泣きたくなるくらいの清らかな笑みとともに返ってきた。「後悔もしてないし、辛くもないよ。お兄ちゃんがいてくれるなら、私は平気だから・・・。」

「目の前のコイツだけは、何があっても守ろう。例え世界が敵になっても俺は守ってみせる。
馬鹿馬鹿しい話だけど、本当にそう思っていたんだ。」

 架の遠い目と懐かしむような声をルイズたちは気が付けば口を挟むことすら忘れていた。先ほど、架は施設のことを話すの
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