暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルなのは〜優しき狂王〜
2ndA‘s編
第十五話〜最後の攻防〜
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し、手を開閉させる。

(痛いけど十分に動く。パラディンの装甲に亀裂はあるが、動作に支障がなければ問題ない)

 回避と離脱により空になったエナジーウイングのマガジンを最後の予備である二つのマガジンと入れ替える。手馴れたもので、もう目を瞑ってもできる作業を手早く行っていく。

「…………満身創痍……かな?」

 戦闘準備というには、些かあっけないものであるがそれを終え、今の自分の姿を見下ろし苦笑しながらライはポツリと呟いた。

「しかし、貴方は行くのでしょう?マスター」

 独り言に答える声は首にかけたネックレスから。こんな時でも背中を押してくれる相棒にライは心からの感謝と肯定の意味を込め、バリアジャケット越しに一撫でする。

「夜天の書、か」

 ポツリと呟いた言葉に特に意図はなかったが、彼にとってそれはとても重い言葉となった。
 視線を向ける先には未だに上半身しか存在しない人型が、距離的な問題でかなり小さくなって見えるが確かに存在する。

「カートリッジ、フルロード」

「コンプレッション」

 十二発の薬莢がコンクリートの地面を跳ね、澄んだ音を響かせる。

「アクセルドライブ」

 始動キーを口にした瞬間、鮮やかなライトグリーンの羽が光を放つ。そしてその光は一筋の軌跡を残し、人型の索敵圏外に伸びていく。

「っ」

 後方に流れるどころか、飛んでいくように過ぎていく景色の中で、ライは歯を食いしばる。加速による肉体への負担が腹部の傷口からの痛みを増幅していく。飲み込みきれずに口から血液が溢れていく。
 傍から見れば気でも触れているのかと疑うようなコンディションの中、ライはしかしその顔に笑みを浮かべていた。
 索敵範囲に飛び込むと、再び壁のような弾幕が迫ってくる。
 だが、先程まで付かず離れずの距離を保つような飛び方を、彼はしなかった。

「――のっ!」

 弾幕の壁といっても多くの砲撃を多重に展開しているだけで、その壁には穴がある。その穴を通るため、ライはエナジーウイングの羽を動かす。
 かつて肩を並べて戦った紅い女性がしたように羽を纏うよう自らに包み、そして砲撃魔法の側面を掠めるように飛ぶ。高密度の魔力同士の擦過によりパラディンのフレームに高負荷が掛かるが、その甲斐あって弾幕の壁を抜けていくライ。
 砲撃を先と同じ方法で受け流し、小さい魔力弾は回避か若しくは叩き落としていく。

「まだ!」

 機械的な対応しかしてこない人型に感謝しつつ、ライは距離を詰めていく。向かう先である人型は今や固定砲台のように空中で佇んでいた。
 彼我距離が縮まる。手を伸ばせば届くと錯覚する。

(まるで月みたいだ)

 益体もない思考が脳裏を掠める。こんな状況でもそんなことを考え
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