木曾ノ章
その7
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ない」
行かないではなく、行けない。その理由を問おうかと数瞬考えたが、先に工廠に行くことが先決と判断し口は開かなかった。
玄関の扉を開けた時、鳳翔さんが背後から声をかけた。
「木曾、最後に一つ」
手短にと返して、彼女の言葉を待った。
「貴方がそんなにも深海棲鬼を倒したいのは、赤城のことが理由なの?」
その質問に私は笑った。幾ばくか気分が高揚したという理由もあるが、恐らく私の顔は楽しいとは違う笑みを浮かべている。
私はその質問を黙殺し廊下へ飛び出て、玄関を閉めた。
二十二時の工廠は艦娘に溢れていた。集う娘らの顔は優れない。緊張と恐怖が僅かに顔に写る。だがそれに飲み込まれてばかりではなく確かに今この状況と向き合っている顔に見えた。
「傾注」
初めて見た顔の艦娘、恐らくは重巡洋艦の者が声を上げ、何事かと思い視線を向ければ柏木提督がそこにいた。全員の細かな動きが止まり、提督に意識を注いだ。
「楽にしろ。現在この港に敵艦隊が接近してきている。偵察部隊の報告によれば数は二、どちらも六艦編成だ。片方は後三十分、もう片方は後一時間ほどでここに到着が予想される。便宜上前者を甲とし後者を乙とする。諸君らには甲艦隊及び乙艦隊の迎撃に当ってもらう」
全員の顔が強張った。だが提督はまだ言葉を続ける。
「敵艦隊の編成だが、甲乙とも戦艦が見受けられ、乙には空母またはそれに準ずる艦がいることも判明している」
誰も声を発さなかったのは流石艦娘というところであろうか。皆は僅かに体が揺れた者、震えだす者もいたが全員が直立のまま提督を見ていた。
「現在鎮守府には第二及び第三艦隊及び予備戦力がいるが、迎撃戦を行うにあたって臨時的に予備戦力で艦隊を組む。第五艦隊は−−−」
幾人も名前が呼ばれていき、新しい艦隊ができていく。改めて周りを見れば半分ほどが知らぬ顔であった。総勢三十はいるだろうか。
「−−−以上だ。これから作戦を言い渡すにあたって質問は」
お互いの顔を見合う他の艦娘とは違い、私は提督を見つめ手を上げた。
「言え」
「俺達は出撃するのか?」
「させない」
周りが少しざわつくが、私は別のことを考えていた、次の質問をするか否かである。私は一つのかけにでた。
「第四艦隊の帰投はいつになる」
すぐには答えが返ってこなかった。この間が広がる程、私は有利になる。
「0200」
私は目だけを動かし周りの艦娘を見やった。反応は二種。一つはなんの問答かわからず見ているだけのもの。もう一つは私が何故そのことを知っているのだという驚いた顔。後者は最初号令をかけた者を含めた重巡数名と響。
「もう一度問う、俺達は出撃するのか?」
提督は黙した。これは一つの脅しである。私が皆に第四艦隊のことをばらすぞという。皆
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