木曾ノ章
その7
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どうなったんだ?」
「……閑職へ移ったとだけは知っているわ」
頭に血がのぼる。これだけの死人を出した作戦の立案者は、まだ生きているのか。
盆から茶を取って飲み干す。いい具合の温くなったお茶のおかげで、幾分か頭が冷静になった。
そう、これは昨年の八月に終わったことなのだ。今騒いだところでどうしようが……八月? 去年の?
いつかの記憶が蘇る。時間はないぞという、提督の口から何度か発せられた言葉。今は五月。艦娘が沈んで一年の後深海棲鬼となるなら、あと三月後!
「その、沈んだ九割が、あともう少しで戻ってくるのか」
私が漏らした言葉に鳳翔さんは「ええ」と呟いた。
「すでに漸減作戦で沈んだ娘たちは舞い戻ってきている。それに、沈んでちょうど一年で深海棲鬼になるというわけでもないの。早いものはもうすでに、戦艦級も発見されている」
「ならば尚の事、俺達に訓練を」
言い出して気がついた。先の問答の繰り返しだ。
「沈んでは意味が無いのよ。沈ませるぐらいならあなた達を武装解除させる」
「だが、戦力はどうするんだ?」
「……第四艦隊が明日、帰ってくる予定よ。戦艦や空母で編成されたこの鎮守府の主力艦隊」
全くの初耳。そもそもこの鎮守府で、鳳翔を除いた艦載機搭載艦を見たことはなかった。戦艦も同様に。
「なんでそれが、今の今までこの港にいなかったんだ?」
「今年大量の深海棲鬼が押し寄せるのは、伊隅鎮守府。けど今の伊隅鎮守府はまだ圧倒的に戦力が足りていない。だから第四艦隊を向かわせているの。けど、もう既に戦艦が現れだしているのとなると話は変わってくるわ。この鎮守府に一度戻し艦隊を再編成し、まだ集結しきっていない深海棲鬼を叩く」
「いつ」
それは、と鳳翔さんは口にはしたが続きを発することはなかった。知らないのか、それとも私に知られてはまずいのかはわからない。
「……とりあえず、もう無茶な真似はしない。赤城に誓ってな。それは今約束する」
「そう、わかってくれたならいいわ。最後に一つ、私から質問していい?」
「構わない」
「貴方が」
その時、警報が鎮守府中に響き渡った。
「何だ?」
立ち上がろうとした私の肩を、鳳翔さんは掴んだ。
「待って」
言われたとおり腰をまた落とす。警報が鳴ってから二十秒ほどで、放送が入った。
「敵艦隊が当鎮守府に接近中。艦娘はただちに工廠にて集合するように。繰り返す……」
はっと息を飲む。この鎮守府に敵艦隊? 疑問に思うが、考える暇はない。
私はすぐさま立ち上がり、玄関へと向かった。ふと気になり後ろに目を向けると、鳳翔さんは先と変わらず座ったままだった。
「鳳翔さん、行かねえのか?」
視線を窓へ向けていた鳳翔さんは、ゆっくりとこちらを向くと首を左右に振った。
「私は行け
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