26話:零崎舞織の人間交流U
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支給品三つ
[思考・状況]
基本思考:服部さんに着いて行く
1:川田なら一緒に行動してもいいかもしれない
2:桐山と相馬と坂持を警戒
3:服部を助けに行きたい
◆
剣道というものは、あまり広い場所を必要としないスポーツである。
オーソドックスな球技のほとんどのようにグラウンドや体育館を用意する必要はない。試合をするだけなら土俵ぐらいの広さがあれば充分すぎるほど。
しかし逆に言えば。
刀を振るにあたり、最低でも土俵ぐらいの広さは必要ということだ。
木々の密集した森は日本刀同士が斬り合う場には向いていない。
服部平次もその事は承知していた。
だからそれを利用して逃げようとしたのだが―――。
「く、そ―――!」
結果は、逃げているのではなく逃げ惑っていた。
「なんなんやあいつは!?」
思わず悪態をつく。
なにせ、服部が今対峙している女、桂言葉の振るう刃は密集している太い木を二、三本纏めて斬り倒してしまうのだ。
それなりの樹齢を重ねているはずの木は言葉の前では盾にすらならない。
服部の立てた地形を利用して逃げるという作戦はもはや役に立たない。
勿論、武力制圧も考えなかったわけではない。いくら人間離れした技を持っていようと人であることに変わりはない。そう思ってこちらから仕掛けて何度か打ち合い、そしてまともに相手をするという考えを捨てた。
次元が違いすぎる。
服部平次が剣の達人だからこそ相手の強さというものがわかる。
あれは人間が相手をするべきものではない。
服部は知るよしもないが、確かに今の桂言葉は人間とは呼べない。彼女は既に妖刀に支配されており、その精神には桂言葉という人間性は微塵も残っていない。妖刀罪花に完全に身を委ねた言葉はもはや人ではなく一本の刀。人間の身体など刀を振るうための装置でしかない。例え言葉の身体が破壊されようと少なくともこの会場には58もの代替品がある。そういう意味では狂戦士西条玉藻と通ずるものがあるかもしれない。もっとも罪花自身は人間を愛しているためそのようには思っていないが。
加えて桂言葉は元から居合いの達人だ。その気になれば人体など鋸で両断できる。もとから刃物を扱うのに向いていた身体だ。罪花との愛称も良かったのだろう。
「うわ、ああ!!」
体勢を低くして居合いを避ける。
その一秒後、服部の後ろにあった木はゆっくりと倒れた。
ドスン、と音を立てて落ち葉を舞わせる。
「へへ、ラッキーやな」
服部は、倒れた大木がちょうど自分と言葉の間にあるのを見てそう言った。
そして懐中電灯を点けて一目散に駆け出す。
言葉は、いや罪花はそんなことで慌てたりはしないし、ましてや服部を逃がしたりもしない。
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