三十九話:守るという選択
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する。例えそれが―――
「……帰ってきて、また一緒に暮らそうにゃ―――ルドガー」
「うあああーーーーっ!!」
―――仲間を……彼女を傷つける選択だとしても。
ルドガーは天に向かって吠えるような痛々しい叫び声を上げてからゆっくりと立ち上がる。そして目を閉じたままゆっくりとイッセー達に語り掛ける。その声は酷く落ち着いていて抑揚がない声だったがイッセー達はまだそのおかしさに気づいていなかった。
「……分かった。お前達がそれだけ言うなら俺も、もう何も言わない」
「ルドガー! やっと分かってくれたか―――」
その瞬間、イッセーの言葉は銃声でかき消されてしまう。その事に訳が分からずに茫然としているところで自分の頬が熱いことに気づく。そして触れてみるとその手には血がしっかりと付いていた。まだ、訳が分からずにルドガーの方を見てみるとルドガーの震える手には拳銃が握られていた。
銃声、己の傷ついた頬、そしてルドガーの拳銃。ここまでの情報が揃っていてもなお、イッセーは状況が分からなかった。否、認めたくなかったのである。だがそんなイッセーの気持ちも虚しく現実が張本人であるルドガーの口から突き付けられる。
「お前達が俺を連れ戻すというなら俺はそれを―――手足をもぎ取ってでも止める!」
そう言うと同時にルドガーは悲しみで憂いを湛えた瞳のまま呆然とする黒歌達に斬りかかって来る。ルドガーに彼等を殺す気はないし本当に手足をもぎ取る気もない。ただ、自分を追えないように傷をつけるだけだ。
ここで戦意を無くしすぐに諦めてくれるならそれが一番だがそうでないのならば自分が手を加えようと彼は思っている。誰かを守るという選択が必ずしもその人を傷つけないという選択になるとは限らない。世界はどこまでも非情で―――残酷だ。
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