4部分:第四章
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第四章
「来てるぞ」
「!?確かに」
続いて別の一人も気付いた。この時代のドイツ軍はまだレーダーは充分に配備されているとは言えない状況であった。だから多分に目に頼っていた。
「いるな。向こうは気付いているか」
「動きを見る限りはまだだ」
見ればソ連軍の夜間戦闘機部隊はのんびりと前を飛んでいるだけだ。確かに数はこちらより圧倒的に多い。しかし気付いていないのならばやり方があった。
「仕掛けるな」
「勿論だ。いいか皆」
指揮官機から指示が来た。
「上にあがる。そこから一気に急降下を仕掛けるぞ」
「それでまずは一撃か」
「そうだ。次に急上昇を仕掛けてもう一撃」
航空戦術の基本の一つである。とりわけ一撃離脱を得意とするメッサーシュミット一〇九や一一〇にはかなり有効な戦術である。
「それで行くぞ。いいな」
「了解」
「じゃあそういうことで」
「全機続け」
早速動く。指揮官機に続いて上昇する。当然ながらその中にはリヒャルトもいる。
「さて。何機叩き落せるかだな」
リヒャルトは機体を上昇させながら心の中で呟いた。自分が撃墜される可能性も考えているが今は前者の方がかなり勝っていた。
その気概を胸に上昇から下降に移る。まだ敵は気付いていなかった。
「よし、これなら!」
目の前の一機に照準を合わせる。その敵機に対して射撃ボタンを押す。闇夜の中に赤い光が放たれそれがその敵機を撃ち据えた。
敵機は忽ちのうちに強い衝撃を受け一瞬動きを止めた。その動きを止めたのは一瞬のことですぐに砕け散り夜空の中で四散して地面に落ちていく。まずはそれで一機だ。
敵の最期まで見ることなく突き抜ける。そこから予定通り急上昇を仕掛ける。
「敵も気付いた、今のでな」
指揮官機から通信が届いた。
「もう一撃の後はドッグファイトになる。覚悟はいいな」
「勿論だ」
「最初からそのつもりさ」
歴戦のルフトパッフェの者達はそれで怯んだりはしなかった。今までの数多くの戦いが彼等を支えていた。ポーランドでも北欧でもフランスでもギリシアでもイギリスでも。戦ってきた経験がものを言っていた。それを糧に今赤い敵軍に向かっていたのだ。
「そうか。じゃあ後は頼むぞ」
「了解。お互い生き残ろうぜ」
「そういうことだな」
互いに言葉を交えさせて急上昇からまた一撃を浴びせる。リヒャルトもその中でまた一機撃墜する。今度の敵も四散して赤い炎となって大空を墓標としたのだった。
「さて」
彼は後ろ目にその墓標を見ながら呟く。
「問題はこれからだな。一体何機やれるかやられるか」
これで敵は完全に警戒態勢に入っていた。流石に二度も攻撃を受けて敵の位置に気付かない者もいない。急上昇から反転しまた降下に移る彼等に対して上昇して向かって来ていた。上
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