4部分:第四章
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と下から二つの軍がぶつかり合う形になろうとしていた。
「正面から来てもな」
リヒャルトはその敵軍に対して言う。しかしこれは独り言になっていた。
「そうそうやらせはしないんだよ。ドイツ軍はな!」
ドイツ軍としての誇りと共に突き進む。正面からぶつかり合った両軍は最初の激突でお互い何機か失った。そこからドッグファイトに入るともうそれぞれが生き残るだけだった。
それはリヒャルトも同じだった。激しく旋回し上下しながら相手を探し倒していく。ここでも二機倒したが周りにはまだ敵が多い。そのうえ自軍の撃墜も目立っていた。
「何人生き残っているかな」
減っているメッサーシュミットの数を見ながら呟く。
「こっちも。生き残らないといけないがな」
そう呟きながら前の敵に照準を合わせる。また射撃を放とうとしたその時だった。
「!?」
不意に後ろから衝撃を受けた。機体が大きく揺らぐ。
「しまった、後ろからか!」
「おい、大丈夫か!?」
仲間の心配する声と共に後ろから一機の敵機が通り過ぎていく。その敵が撃ってきたのは間違いなかった。敵のパイロットの顔も姿も夜闇の中で見えなかったがその動きは誇らしげなものに見えた。
「ああ、何とかな」
彼は仲間にこう言葉を返した。少なくともダメージは受けていないのは確認できた。
「ただ」
「どうした?」
「これ以上の戦闘、いや飛行も無理そうだ」
「やられたか」
「ああ。それも派手にな」
通信で答えた。
「操縦が効かなくなっている。動かない」
「そうか。だったらすぐに脱出しろ」
それしかなかった。動かない機体に乗っていても死ぬだけである。
「いいな」
「わかった。じゃあ後は頼む」
彼も仲間の言葉に従うことにした。そのまま下降し敵から離れたところでコクピットから出た。この時もかなり緊張していた。
「開けよ」
これはパラシュートに願った言葉だ。パラシュートが開かずにそのまま地面に激突して死ぬパイロットも多いのだ。この時開かず白く長い姿を見せるパラシュートを狼煙と呼んでいる。欧州戦線の名物でありリヒャルト自身その狼煙を何度も見てきている。他人事ではないのだ。
願いつつコクピットから完全に出て下に落ちる。その中でパラシュートを開く。
幸いにしてパラシュートは開いた。上を見ればまだ戦闘が続いている。多くの炎が起こりそれが戦闘が続いて人が死んでいることを知らせていた。
「勝てばいいがな」
彼はその多くの炎を見ながら思った。撃墜されても自軍の勝利を願っていたのだ。
「だが。どうなるかな」
そこまではわからず視線を下にやる。下は真っ暗闇で何も見えない。とりあえず敵に近い場所や沼地でないことを願いつつ降りるのだった。
背中から着地すると鈍い衝撃が襲う。それに堪えて降りると
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