憎悪との対峙
40 明かされた混沌
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は何が食べたい?」
「サイトくん?まだ動かない方が…」
「大丈夫だよ。ちょっとコンビニに行くだけさ。メリーの分の食事も必要だ。僕と違って3日近くなにも食べてないはずだからね」
彩斗は財布を手に取った。
「ちょっと。あなたは今、警察から見つかるとまずいってこと、忘れてないわよね?」
「警察に?」
「別に重要参考人っていうわけじゃないわ。でも動機はある、病室から抜け出してアリバイははっきりしていないということは全く事件に関与していないという証拠もない状態なのよ。だから大人しく待ってなさい」
ハートレスは彩斗から財布を取り上げた。
しかし彩斗はすかさずそれを取り返す。
お互いが睨み合う。
今にも口論が起きそうな状況だ。
だがそこに口を挟んできた者がいた。
「待って」
「何よ?」
「私がサイトくんについて行くわ。もしあなたのいない間にメリーさんに何かあるといけないし」
「でもねぇ…分かったわ」
ハートレスはアイリスの思惑に気づいた。
アイリスは彩斗と話すつもりだと。
恐らくハートレスのことを彩斗は信頼している反面、警戒している。
しかしアイリスのことはどういうわけか信用しているようだった。
カーネルから託されたからというわけではなく、それ以上に自然と受け入れている。
その構図を利用するというのは気が引けるが、事は彩斗の生命に大きく関わることだ。
アイリスは後ろめたい気持ちを抑えながら、クローゼットを開けて中からメンズの中折れ帽子を取り出した。
「これなら多少だけど人相を隠せる…はず」
「…似合ってるわ」
「…ありがとう」
彩斗はアイリスに言われるがままに青の中折れ帽子をかぶった。
その帽子は彩斗を変えた。
ただでさえ男女の区別がつかないような顔立ちで透き通るような肌に艶やかな髪という容姿である状態が帽子1つで更に美しく、なおかつクールで凛々しい雰囲気を持った少年へと。
「じゃあ…行ってくる」
彩斗は財布をポケットに仕舞うと玄関の方へ向かった。
アイリスもすぐ後ろをついてくる。
今まで誰からも避けられていた彩斗からすれば、こうしてメリー以外の誰かと出かける。
そんなことは滅多になかった。
しかし同時に嫌な想像が頭に浮かんできてしまう。
自分といることによって、ミヤのようにアイリスにも何か災いが降りかかるのではないかと。
彩斗は心配になって靴のひも結ぶアイリスの方を見た。
するとそんな想像を打ち消すような慈悲深い微笑みが返ってきた。
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