第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
八月一日・夜:『アイテム』
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「ひ、酷い……非道すぎる。あんまりだ─────あ、いらっしゃいませ……」
彼女から放たれた言葉の方に、嚆矢は酷くショックを受けながら。これ幸いとばかりに項垂れて従者達の視線から逃れながら、厨房に引っ込んでいこうとして。
鳴り響いた、冒涜的なドアベルの音色。それに、振り向けば────
「お邪魔しまーす……あれ、店主さん代わった訳?」
「──────な」
息を飲む、衝撃に。夜闇の中から歩き出てきた、裏の自分の良く知る金髪碧眼の娘────フレンダ=セイヴェルンに。
魔術的な抵抗か、記憶操作に関する能力を持たない限り、師父から招かれた訳でもなければ再び辿り着く事など能わぬ筈のこの店に、再び現れた少女に。
「ま、空いてるみたいだし……ウェイターは良しとしようかねぇ」
「そう? 私的には及第点な訳だけど」
「誰もアンタの男の好みなんて超聞いてないんですけど」
「ん……大丈夫。そんなふれんだを、わたしは応援してる」
その後ろから続いた『上司達』、麦野沈利と絹旗最愛、滝壺離后の『アイテム』の面々に相対して。
無論、今は『影』に潜んでいる“呪いの粘塊”で『Mr.ジャーヴィス』の姿をしていない彼を、彼女らは『部下』とは気付かない。
「騒がしくなってきたわね……私、凪の夜の海のような静けさの方が好きなの。御暇させて戴くわ」
「あ、はい……お送り」
「結構よ。それじゃあ、再見」
だが、増えた人口密度に眉を顰めた姫君が立ち上がる。慌てて椅子を引いて見送ろうとするも、制されて。従者を引き連れ、姫君は戸口を跨いでいった。
すかさず握り締めた首飾り、『兎脚の護符』の『話術のルーン』を励起しながら、嚆矢は。
「……い、いらっしゃい……ませ……四名様で宜しいでしょうか」
「そ。結局、良い席を用意して欲しい訳よ。結構格好良いウェイターさん?」
冷や汗を吹き出し、顔を引き攣らせて笑いながら。ウィンクしてきたフレンダの言葉に、窓際の四人掛けの席を促したのだった。
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