三十八話:偶には旅もいいよな
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行っていたのかは知らないけど帰って来るなり死にそうな顔になったアーサーと美候を無視して鹿肉のトマト煮を作り始める。
因みに鹿は昼の間に俺が狩ってきたものだ。これはトマトの酸味を少し抑えて肉の油で甘みを出さないとな、黒歌はそっちの方が好きだから……って、今は居ないんだったな。俺はそのことに今更ながらに気づいてフッと息を吐き出す。
自分から離れるって決めたのに……俺の心はいつまでたっても黒歌から離れられないんだな。俺は本当に情けない男だな……君を守りたいのに君を危険な目に合わせようとしてしまう。本当に……情けない。俺は自己嫌悪で溜息を吐きながら料理を作っていった。
「ヴァーリ……何でお前はこのトマト地獄に耐えられるんだよぉ……」
「美候の意見に同感です……なぜ飽きないのですか?」
「あら、美味しいじゃない。美味しい物には飽きないわ。それよりそんな事を言って大丈夫なのかしら?」
『……身体はトマトで出来ている』
「「まことに申し訳ございませんでした!」」
俺が『無限のトマト料理』の詠唱を始めるとすぐに土下座をして謝って来る美候とアーサー。もはや恥も外聞もないその格好にそんなにも嫌なのかと逆にこっちが引いてしまう。兄さんなら嬉々として受け入れそうなんだけどな。ん? 俺達が可笑しい? そんなことはない、トマトが毎日食卓に上がるのはごくありふれた家庭の日常なんだ。異論は断じて認めない、嫌というなら『絶拳』だからな。
「ねえ、私のお嫁に来るのをもう一度考え直してくれないかしら?」
「俺が愛しているのは黒歌だけだ。それと、何度も言うけど俺は男だ! 婿だ!」
「そうは言っても一家に一人あなたが居れば大丈夫な家事能力を持っているんだから嫁でいいじゃない」
ヴァーリがいい加減諦めなさいよ的な顔でそんな事を言ってくるが俺は決して認めないぞ。例え、家の家事のほぼ全てを俺がやっているとしても、近所の奥様方達とどこどこのスーパーで今日は特売があるとかの情報交換をしているとしても、この旅の最中でも破れた服やら汚れた服の修復や手入れを全て俺がやっているとしても俺は認めない! どちらかというとお母さんとか言うのもなしだぞ。俺は男だ、黒歌の婿なんだ!
「まあ、いいわ。それより修行の方は順調かしら?」
「ん、骸殻の修行か? ああ、部分的に発動するのは、大分コツは掴めてきた」
俺も何も旅をしている間、遊んでいる訳じゃない。ヴィクトルに勝つ確率を少しでも上げるために俺だって修行をしているんだ。今は骸殻を部分的に解放して生身の状態での戦闘能力を上げようと奮闘しているところだ。ヴィク
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