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最後のストライク
1部分:第一章
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され、戦争の空気はさらに濃くなっていた。時代は戦争へ、戦争へと傾いていくばかりであった。
 そんな中で多くの者達が戦場に向かった。全ての若い男達が。そしてその中には進一の兄の藤吉もいた。頑健な身体を持つ野球選手である彼が兵隊に取られない筈がなかったのだ。彼は戦場へと旅立った。
 昭和十六年、彼にその兄がいた名古屋軍から声がかかった。野球選手にならないかと。
「野球選手ですか?」
「そうだよ」
 今で言うスカウト、球団の者が石丸に対して語った。彼は名古屋弁、そして石丸は佐賀弁であり意志の疎通にはやや苦労したがそれでも話はわかった。
「君のお兄さんもうちの球団にいたしね」
「はい」 
 それの縁が大きいのはわかっていた。だからこそ声がかかったのは彼もわかっていた。
「それで。うちで頑張ってみないか」
「本当にいいんですか!?」
 彼は問うた。
「僕みたいな中学を出たての人間で」
「野球は若い力が必要なんだ」
 球団の者は強い声で言った。
「君みたいなね。それでは駄目かい?」
「いえ」
 それには首を横に振った。
「巨人にいる川上君と吉原君だってそうなんだよ」
「ああ、あの人ですね」
 巨人が熊本から目をつけて入団させた二人だ。巨人はどちらかというと吉原の強肩と能力に目をつけたらしい。だが川上のその左腕とバッティングセンスも話題になろうとしていたのだ。
「彼等だってまだ十代なんだ」
「そうでしたね」
 自分とそう変わりはしない年齢だ。それを聞くと何か気が楽になった。
「どうだい、彼等に負けたいかい?」
「まさか」
 九州はそれぞれの地域意識が強い。互いにライバル意識を持っている。
 佐賀もそうだ。熊本に対してライバル意識がある。彼の心にもそれがあったのかも知れない。
「やります」
 彼は言った。
「僕、そちらでやらせて下さい」
「よし」
 球団の者はその言葉を待っていた。思わず会心の笑みを浮かべた。
「ならば。来てくれるね」
「はい」
 彼はもう一度力強い声で答えた。
「是非共。お願いします」
 二人は両手で握り合った。こうして彼は職業野球の選手になった。昭和十六年のことだった。
 最早アメリカとの戦争も避けられなくなっていた。それをどうかしようとあがいていたがあがくだけだった。日本は次第に暗く、そして沈んだ世界に入っていっていた。
 そんな中だった。彼が名古屋軍に入ったのは。兄が戻って来て最初の兄弟選手となっていた。だがそんな話題もこの時はさして問題にはならなかった。全てが戦争に覆われていたからだ。
 内野手、ショートとして入った。だが彼は学生の頃はピッチャーであり、そして職業野球でもピッチャーになりたかった。バッティング投手として投げ続け、翌年には投手転向を実現させた。
「やっぱ
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