暁 〜小説投稿サイト〜
蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第111話 試合開始直前
[9/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
確かに、俺は生物学的に言うとヒトと言う種族の枠からは多少外れた生命体かも知れませんよ。その部分を否定する心算は毛頭ありませんし。
 但し、一応、両者の間にはハイブリッドが誕生する以上、完全に別の種と言う訳などではなく、割と近い種族である事は間違いないとは思いますけどね。

 しかし――

 しかし、それイコール、奴らと同じ側に立つ存在と言う訳ではないでしょう。
 少なくとも同族……人間を殺した事もなければ、平気で武器を向ける事さえ出来ない人間ですから、俺は。戦う時は常に自衛の為、殺意や害意を俺に向けて来た相手に対して反撃する時にのみ己の能力を振るって来た心算。
 故に、俺の剣は後の先。術に関しても相手が先に放った術を返す技。呪詛返しと言う系統の術を最初に覚えて行ったのです。

 己の目的の為に、無辜の民。ゴアルスハウゼン村周辺に住む翼人の村を壊滅させたり、その他の町や村を魔獣に襲わせたりするようなヤツと同じ側に立って居る、などと言われるのは言いがかりも甚だしいでしょう。
 三文小説の主人公じゃあるまいに、その程度の揺さぶりで自分の立ち位置が揺らぐような精神的にヤワな人間ではありませんから。

「ちょっと、あたしの子分に何、言いがかりを付けてくれるのよ」

 こいつは間違いなしにバカで無能だけど、あたしの子分なんだからここに居て良いのよ。
 あまりのアホ臭さに俺が答えを返せないで居た事を、何か別の理由で答えに窮して居ると感じたのか、将又(はたまた)、友達を取られて仕舞う、と言う、妙に子供じみた独占欲から発した言葉か。俺が何らかのリアクションを行う前に、何故か答えを返して仕舞うハルヒ。
 ただ、バカで無能は余計だと思うのですが……。

 横合いから口を出して来た闖入者の答えに、相変わらず表面上だけの微苦笑の後、肩を軽く竦めて見せる自称リチャードくん。そんな仕草のみが、彼が外国籍の人間だと思わせる要因で、その他の部分……。例えば、顔のパーツや流暢な日本語などから、母国語を日本語とする民族に属する人物だとしか思えない存在。
 そうして、

「やれやれ。あの我が儘が服を着て歩いているようなハルヒさんが、他人の心配ですか」

 世も末だね、こりゃ。そう言う心の声さえ聞こえて来そうな言葉を発する自称リチャードくん。もっとも今回に限って、と言わせて貰うのならば、表面上は同意出来る意見。
 ただ、俺がこの世界に帰って来て、再び出会った涼宮ハルヒと言う名前の少女に関しては、その一言だけで表現出来るほどの単純な人間ではないような気もするのですが。

 試合……いや、もしかすると死合い直前のあいさつで整列した状態での舌戦。もっとも俺としては、こんな舌戦など受ける心算もなければ、仕掛ける心算もなかった……はずなのですが……。
 
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ