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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第111話 試合開始直前
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 私は人形じゃない。私には守りたい子が居て、守りたい今があるから。

 独白とも、告白とも取れる内容。ただ、彼女がそう考えて居るのなら、再び揺り戻しを狙って歴史改変を企む可能性は低い。
 但し……。

「多分気付いて居ると思うけど、今のトコロ、代わりの人間を参加させる企ては成功していない」

 内容は深刻。しかし、口調は普段通りの何の緊張感も持たない口調でそう答える俺。
 そう、試合放棄の企てを阻止されるのなら、選手すべてを俺たちの側の人間に置き換えて仕舞えば良い。ただ、それだけの事。
 そう考えてから第二の案として、綾乃さんに相談したのですが……。

 急場に動かせる戦力はなし。更に、一時間でも良いからこちらに増援として送られる戦力がないかと問うたのですが……。
 それも今のトコロはなし。何と言うかトホホな現状を知らされる結果と成りました。

 但し、これは異常。そもそも急場に動かせる戦力がない、……などと言う事はあり得ない。何人かは水晶宮の方に予備戦力として用意してあるはず。それが存在していないどころか、一時間でも良いからと言う申し出も、今は無理と言うのは最早異常事態としか言い様がない。
 転移や瞬間移動系の仙術は幾つも存在しており、その術が行使出来るのは、生まれてから二〇〇三年の四月まで俺が暮らして居た世界では、当然のように俺一人ではありませんでした。俺の師匠や、綾乃さん。その他にも俺が知っている範囲内で何人も存在していましたから。

 それでも尚、急場に動かせる戦力がないと言う事は、それ即ち因果律に対して何らかの介入が為されていると言う事。一番簡単なのは、陽動として別の場所で大きな事件が起きて居るなどと言う事が考えられる状態。ただその程度の事で、水晶宮関係のすべての人材が完全に出払う事は考えられないので……。
 おそらく、ここ北高校以外でも何かかなり異常な事件が複数進展していると言う事なのでしょう。

 故に、

「そもそも何の意図が有って、高々平均的な高校の球技大会程度に介入して来るのか、その理由は判らないけど……」

 現在の状態が絶対に安全、とは言えないし、皆を必ず守るとも確約出来ない。
 俺としてはかなり辛い内容。しかし、現在の自分たちが置かれた状況を正直に包み隠さず口にする。

 僅かな隙間。バットが産み出す金属音が、キャッチャーミットが鳴らす小気味よい音が、冬の乾いた風に乗り二人の間を過ぎ去って行く。
 そして、三本目の打球が、今度はレフトの頭を越えて行った後、

「問題ないわよ、武神くん」

 ここに居る女の子たちは、貴方が思って居るよりも強い子ばかりだから。
 そう口にした彼女が右手で、俺の左肩を嫌と言うほどどやしつけた。御丁寧な事に、おもいっきりバックスイン
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