第6章 流されて異界
第111話 試合開始直前
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も似ている。俺とヤツら二人は。
「ねぇ、武神くん」
ハルケギニアでも見覚えのある二人組の練習に気を取られていた俺。その俺に対して呼び掛けて来る蒼髪の委員長。その声は普段の彼女の声と比べるとより深く、そして、暗い色が着いて居た。
しかし――
しかし、その様に考え掛けてから、その思考の中に少しの違和感を覚える俺。
そう、彼女の発して居るこれは暗さではない。これは……おそらく覚悟。彼女……朝倉涼子も何か。守りたい何かが存在し、それを守ろうと心に誓っている、と言う事なのかも知れない。
その瞬間、彼女の発して居る雰囲気を感じた俺。そして、俺の考えて居る内容に気付いて居る……可能性のある彼女が更に言葉を続けた。
先ほどよりも更に強い覚悟を滲ませた言葉を。
「お願いだから、私を試合から外さないでね」
彼の二人が登場した以上、この状況は異常事態が発生した、と言う事なのでしょう?
彼の二人。この言葉はおそらく、オーストラリアからの留学生と称している二人組の事を指し示しているのだとは思います。
ただ、何故彼女が、あの二人が現われた事によって、現在が異常な事件が進行している最中だと判るのかが不明、なのですが。
微かな疑問。その疑問に対する明確な答えを見付け出せない内にも、ヤツラの練習は続き、次の決勝戦が真面に正面からぶつかれば、こちらに勝ち目が薄い事を実感させるだけの能力の高さを示して行く。
魔法に類する小細工なし、では。
「私たちは普通の人間とは記憶の方法が違う。そうでなければ、度重なる歴史改変の際にそれまでの記憶……記録の一切を失う事となるから」
俺が答えを見付け出せず、ただ練習を見つめるのみと成って居る状況の中、喜びも哀しみもない、ただ淡々とした口調で言葉を続ける朝倉涼子。この彼女の言葉に因り、彼女が歴史改変……。いや、俺たちの側から言わせて貰うなら、ハルヒと名付けざられし者との接触が起こらない、正しい歴史に戻る前の狂わされた歴史の記憶を持ち続けている事に、水晶宮が気付いていないはずはない、と言う事がはっきりしたと思う。
それでも尚、彼女が信用されているとするのなら、それは――
実際に彼女。朝倉涼子を瞳に映す事もなく、そう考え続ける俺。視界の中では、試合前の一年九組のバッティング練習と、ピッチング練習が徐々に熱を帯びて行く。
「私はヤツラが嫌い」
規定通りに私を操り、規定通りに私を消し去り、そして、また必要になったからと言って復活させる。
そんな活動を永遠と続けさせられ、それらをすべて記憶させられる。
「こんな地獄にもう一度戻りたいとは思わない
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