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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第111話 試合開始直前
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、ハルケギニアで行ったような巨大な術式の行使。例えば、ダゴンの召喚や、クトゥグァの召喚。魔獣や狂獣などを操って都市を混乱させるような真似を為すには、準備にそれなりの時間が必要なはず。それでなくても、一年九組と言う、本来ならば存在しないはずのクラスを丸ごとひとつでっち上げるような非常識な事を為した以上、今までにもそれなりには時間を費やしてきたはずです。この上、更に時間が掛かるような大規模な術式を使うのならば……。
 ヤツらがもっとも恐れているはずの封印をされる可能性が高く成る一方ですから。

「涼宮さんも相変わらずみたいで安心しましたよ」

 それまで俺たちの会話をただ見つめるだけで有った今一人の留学生。一年九組のキャプテンの位置に並ぶイケメンが、会話に割り込んで来た。
 しかし、相変わらず――か……。

 西洋人の男性として表現されがちな骨太さや汗臭さとはまったく無縁――完全に正反対とも言うべき容姿。優しげな目元。柔らかい黒髪。その涼しげな面立ちと相まって、如何にも凛々しく感じる立ち姿。野暮ったい……と表現されるタイプの野球のユニホームを着ているはずなのに、周囲の連中と比べるとヤツだけは清潔で、より洗練されているように見えるのは不愉快、としか言いようがない。

 ただ……。

 ただ、こいつも先ほどの自称リチャードくんと同じ。十人中八人までが好意を寄せるであろう容姿。そして明晰な頭脳。高い運動能力。神が二物も三物も与えたかのような容姿や、表面的に垣間見える能力の向こう側に何故か感じる深き闇。
 そんな底知れぬ恐怖のような物を感じさせる相手。
 確かに闇の向こう側に存在するモノが確実に敵とは限らない。まして、絶対に危険なモノだとも決まっている訳でもない。
 しかし、ヤツから俺が感じているのは、非常に危険な敵の香り……。

「それなら、涼宮さん。ひとつ賭け(ゲーム)をしませんか?」


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