第6章 流されて異界
第111話 試合開始直前
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耳に心地よい……。野球が好きな人間ならば間違いなく心が騒ぐ音。しかし、これから試合をする相手が発して居ると考えると、背筋に冷たい物が走る打球音が響く校庭。
通常よりもかなり後ろに守る外野の頭の上を軽々と越えて行く打球。
通常の投手よりも一メートルほど前から投げている打撃投手の速球は、何処からどう見てもハルヒの投じるソレよりも早い。
【この学校に理数系の特別進学コースのクラス。一年九組など存在してはいない】
どう低く見積もっても、甲子園常連校レベルの野球部でしょうが、ここは。……と言う一年九組の練習を見つめる俺たち一年六組のメンバーたち。
左のバッターボックスに立つイケメンがバットを一閃する度に、打球が外野手の頭の上を越し、その向こう側に立つ球拾いたちが右に、左にと走らされる事となる。
尚、当然のように、有希の【念話】を聞いた後、無駄に時間を潰して居た訳ではない。
存在しないはずの生徒を一クラス分作り出す。そして、それを誰にも異常を感じさせていない状況など真面な状態ではない。
こんな事が出来るのは因果律を歪める事の出来る存在。いや、歴史すら書き換えられる神に等しき存在が関わって居なければ不可能。
流石にそんな危険なヤツが関係している事態に一般人……ハルヒ以下のSOS団の面々を巻き込む訳には行かない。
そう考えて――
試合の中止を俺たちのクラスの担任で、水晶宮から送り込まれた人間の綾乃さんに進言。具体的には誰かが怪我をした事にしての放棄試合を目論んだのですが……。
しかし、その程度の浅知恵は既に有希や万結。そして綾乃さんの間で実行に移されて居り、それでも、代替選手のルール。流石に決勝戦を放棄試合で優勝するクラスが決まるのは問題があると言う事で、特別に代替選手を出す事を大会運営委員会より提案され……。
――あっさり失敗。
「ちゃんと相手の練習を見て置いてね」
左側……。何時も俺の右側に立つ紫の髪の毛の少女は、ウチのチームのエースのキャッチボールの相手を。彼女の代わりに、何時も左側に居る蒼い髪の毛の少女が右側に立ち、空いた左側の方には――
「私が調べた限りでは、今、バッティング練習中の男子生徒」
手にしたメモ帳に瞳を動かしながら、そう話し掛けて来る蒼髪の委員長朝倉涼子。
その彼女の視線の先には俺と同じぐらいの身長。服装に関しては、何処かで見たような縦縞のシンプルな野球のユニフォームを着込んだ少年……以上、青年未満の男子生徒が、かなり自然なフォームで左バッターボックスに立って居た。
柔らかそうな黒髪。落ち着いた雰囲気のある黒の瞳。細い顎に、とても男性とは思えないような肌理の細かな肌。これで進学用の特別クラス所属で、スポーツも万能と言う、こう言う人間
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