Ah, wann treffen sie sich wieder?
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[9]前 最初
視界が眩む。立っているのすら辛くなるほどに意識が急激に遠ざかっていく。
長椅子に手をついて持ちこたえようとするが、ずるずると床に座り込んでしまう。
「な、に……」
「……」
影は応えない。視界は暗転し、もはや何も視えない。
やがて、ハイドリヒは床に倒れ込み気を失った。
動かなくなったハイドリヒへと歩み寄り、影もそっと彼の傍に膝をつく。
そして、白く青白さすらあるその手でハイドリヒの美しい金色の髪に指先で触れた。
「あぁ―――」
頼りなく、震えすら滲む声。
「お前の仕業か、ハイドリヒ」
そう気安く呼んだ声は穏やかだ。
「お前に言われては、私も引き摺られてしまうさ。なぁ、そうだろうハイドリヒ」
返事は無い。
閉ざされた目に、影は映らない。
そんな彼の頬に落ちた雫は、何だろうか。
「私は我慢していたというのに。随分と気が短いぞ。お前は」
頬を撫でる細い指。
「あぁ馬鹿らしい。堪えていた私の意志すら無視するとは。お前はいつもそうだ。
私の気持ちなど考えもしないで、己の在るままに進んで行って、己を疑わない。
女神への潔い敗北を認めたお前も美しかったから、私も何も言わずにいたのだぞ」
次々と漏れるそれは愚痴だ。
だが他人に吐き捨てているようなそれとは違う、
確かに友誼を結んだ、友への言葉。
―――『果てまで見せろ。このラインハルト・ハイドリヒの友であるなら』
「ハイドリヒ……」
―――『愛でるためにまずは壊す。ゆえカール、卿も壊さずにはおれんというだけ』
思い出す言葉は今もこの胸の中で輝きを失っていない。
―――『端的にな、友情だよ。付き合ってやろうというのだ。
そも、誘ったのは卿であろうに。今さら私を白けさせるな』
「その誘いに乗ったのはお前だぞ、ハイドリヒ」
だから、この友誼は今もって普遍であると、
「私は、調子に乗りやすいのだと解っていないな」
手を遠ざける。
その手が夕暮れに溶けていく。
黒い髪が風に揺れて、男の表情を隠す。
「ああ」
我が友。
永遠の、私の、
「また、またいつか……」
何処か、誰も知らない、空の果てで。
「語り合おうじゃないか。万回でも、繰り返して飽きるほどに」
Auf wiedersehen.meine Freund.
END
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