第四話
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供のようにわんわん泣き出すと、戸惑いながらも私の着物の乱れを直してくれてしっかりと抱き返してくれた。
気遣うように私の背を擦る小十郎の手が暖かい。
けれど背に感じる視線は、その手の温もりとは打って変わって酷く冷たいものだった。
「……小十郎、テメェ……何でここにいる。絶対に来るなと言っただろうが」
低く威嚇するようなこの政宗様の声に、私は一つの可能性に気づいてしまった。
実は小十郎は今夜こうなることを分かっていたのではないのか、と。
「……知ってたの?」
答えない代わりに酷く苦しそうな顔をした小十郎を見て、こうなることを知っていたのだと気付いた。
考えてもみればそうだろう、小十郎と政宗様は日頃べったりとくっ付いてるってのに、
小十郎の与り知らぬところでこうなるとは思えない。
「申し訳ありません……全て知っておりました。
知っておきながら政宗様をお止め出来なかったのは小十郎の咎です。
……どうか、政宗様を御恨み下さいますな。恨むのならばこの小十郎を」
「馬鹿、どうして小十郎を恨むのよ……助けに来てくれたじゃない……」
小十郎に縋って泣く私をじっと見ていた政宗様から殺気にも似た怒気が発せられる。
それがどちらに向いているのかは分からないけど、
とにかく政宗様にしてみれば面白くない状況であることは間違いない。
つか、強姦しようとしておいてその態度かよ、ってのはあるけども。
「……覚悟は出来てるってことだな? 小十郎」
「この件で腹を切れと言うのならば、甘んじて受けましょう。
……が、やはり女子を手篭めにするなどと許せることではありませぬ。
いくら政宗様が姉を好いていても、やって良い事ではございませぬ」
「……建前はよせよ。許せねぇのは、テメェがこいつを女として見てるからだろうが」
私を抱いている腕がぴくりと動いた。表情は珍しく青ざめて凍り付いている。
……ちょっと待って。それって、まさか。
「分かってんだよ、見てりゃあ……どんなに綺麗事並べたところでテメェがやましい感情持ってるってのは」
「……小十郎?」
何も答えない。というよりも、何も答えられないんだと思う。
もしそれが謂れも無いことであれば、馬鹿なことを言うなと即怒鳴っていたことだろう。
けど、それがないということは紛れも無い事実だと解釈して間違いない。
……昔からこういうところで嘘がつけないんだよな、この子は。
「……こんなこと許したのは、諦めをつけるためだろうが。テメェのその報われない恋心によ。
俺のモノになっちまえばお前は諦めざるを得なくなる。
まぁ、そうでなくても血の繋がった、しかも双子の姉だ。端から勝負にもなりゃしねぇ」
カ
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