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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第4章 “妹達”
1.August・Night:『R'lye text』
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衣装の男女が、素早く露払いに現れる。その無駄の無い動き、所作からは紛れもない武練の気配。しかも、生半可な功夫(クンフー)ではないと一目で判るレベルの。


──中国拳法……か。何者だ、コイツら?


 その二人の眼差し、ドロリと濁った死魚の眼の如く、瞬きの無い視線に肌が粟立つ。即ち、明白な殺意────


沱琴(ダゴン)沛鑼(ハイドラ)。あまり私に恥を掻かせないで頂戴」
「オ嬢様、済ミマセン」
「オ嬢様、御免ナサイ」


 それを踏みにじるようにクスクスと笑いながら、海の気配を連れた屍蝋の如き肌の少女が歩み入る。二人の従者を控えさせながら、水色の髪を結った中華袖の衣装の娘が。
 年代物の木製の床を、きしりとも軋ませない(さざなみ)のように静かな歩法は、やはり生半可な功夫とは思えない。


「あら、お出迎えは無し? 日本のおもてなしは世界一と聞いていたのだけれど?」
「っ……、…………っ」


 何よりもその腰の巻物だ。そこから放たれる淀み腐った水の如き、凄まじいまでの瘴気。それに、深海の水圧に喘ぐように息を吐いて。


「いらっしゃいませ、ご予約の」
「ええ、可愛らしいお兄さん? 私が今宵の主賓────」


 殺意よりも明白な、『食欲』を瞳に湛えて此方を見遣る────三人の人外を。


「“螺湮城異伝(ルルイエ=テキスト)”が主、玖 汀邏(クゥ テイラ)アルよ。くふふ…………」


 一昔前の映画の中国人のような口調で巫山戯(ふざけ)、嘲笑う海神(わだつみ)の姫君を。
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