覚えていないのは、騙されてるから(緑)
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に立てて、瓶ビールを入れるカゴを逆さまにし、その上に腰を下ろした。
そして自分の太腿を軽く叩いた。
恋也にしてみれば何を意味しているのか分からない。
ジャケットの男――ルパン三世は『足、見せてみろ』と口を開く。
恋也は何故足を怪我したのを知っているのか、そこに疑問を持っていたがこのまま無言でいればきっと、無理矢理にでも怪我をした足を触るだろうと思い、右足の靴を脱ぎ靴下を脱いで言われるままに行動した。
靴と靴下は地面に置いてあり、壁に手をついて、ルパンの太腿に遠慮がちに足を置いている。
制服の裾の捲られ足首に出来ている紫色の痣を見て、一瞬表情を曇らせる。
高校生にしてはやりすぎる酷い怪我を恋也はしていた。
右足には打撲や切り傷、捻挫とも言える怪我等が沢山あった。
右足がこうならば、左足も同じ様になっているだろう。
『誰にやられた?』
『別に……。喧嘩しただけ』
『あれが喧嘩か? 俺には一方的に殴られている様に見えたぜ』
酷いもんだな、そう呟いたのは紛れも無いルパンである。
『そういう世界に住んでるから、仕方が無い』
逃げ出したいとも思わなくなった恋也は感情を含めずに、淡々と告げた。
ルパンが足首に触れた途端、なんとも言えない激痛が走った。
『いっ!』
ガリッ、壁を引っかく音が聞こえたと同時に荒い息遣いがルパンの上から降ってくる。
軽く触れただけでこんなにも痛みを覚えるなら、強く握ると気絶してしまうのではないか、そう思っても仕方ない。
『痛むか?』
痛み故に体がいう事を聞かないため、素直に頷くことしかできない。
そんな恋也に問うてくるルパンは何がしたいのだろう、と恋也は頭の中で考える。
恋也は「ルパン三世」について知らないに等しい。
世界中で盗みを働いていても、自分の目の前に現れる事も無いだろうと思っていた。
顔だって知らない。
何故、自分は見知らぬ人に足を見られているのだろう。
――そういうことか。
そこで理解した。
後で利用される、と。
自分の周りにロクな大人が居ないせいなのか、考えがひねくれてしまった。
だから目の前にいるのが「ルパン三世」だという事など気が付かずに、何に利用されるのか、そんな事をひたすら考えていた。
『家まで帰れそうもないぜ……』
足の怪我だと家まで帰るのなんて不可能だろう。
そんなこと自分でも分かっている、分かっている事を告げられ、舌を打って返答する。
『医者でもないくせに、俺の足なんか見てどうすんだ?』
怒気を含んだ声で低く尋ねる。
ルパンは気にする様子もないのか、ポケットの中から湿布を取り出して足首に貼り付けた。
丁度、この路地裏を通る前に買ったものだ。
恋也の質問に、湿布を貼り付けて
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