覚えていないのは、騙されてるから(緑)
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尋ねてみる。
「連れて行ってやろうか?」
アジトの中は明るいとは言えなくて、蝋燭の灯りだけが光っているので、半分は真っ暗で半分はオレンジに光っている。
今恋也の目にはぼんやりと顔の輪郭が映し出されて、完全には分からないが何となくだが、ルパンの表情を確認することはできている。
だが、恋也にはルパンの質問が理解出来ないでいた。
「何を? 何処に?」
ルパンは得意げに口角を上げ、両手を広げてこう告げた。
「お前を世界中にだよ」
その瞬間、恋也の中であの言葉を思い出した。
昔と言っても、そんなに年月が経っていないが、何年前には変わりないあの日言われた言葉を思い出した。
まだ恋也が中学2年の時、ルパンから言われた一言。
『お前がもうちょい大人になったら、世界中に連れて行ってやるよ』
ルパンは覚えていないだろうな、と思いつつ恋也は俯いて暫く黙ったまま。
大人と言えば大体が20歳をイメージするだろう。
どうせルパンもその場から逃げるために吐いた嘘なのだろうと、淡い期待もせずに頷いた自分は何だったんだ、そう思わせた。
「……まだ、高校1年だけど」
進路とかはどうにかなるだろう。
学校に行って、たまに喧嘩に巻き込まれる日常を繰り返すよりも目の前の男について行った方が退屈しないのは分かりきっている。
退屈はしないが、生と死の境目で生きるようなもんだ。
だが、憧れにそんなものは必要なかった。
「俺はもうちょい大人になってからとは言ったけど、20歳になってからなんて言ったつもりはねぇぜ? 恋也ちゃん」
「えっ……」
覚えている訳がない、そう決め付けていた為、覚えていれば言えるセリフを目の前で言われ、混乱しつつも何度も瞬きをしながらルパンを見つめ、やっと覚えていたというのを理解すれば俯いてしまった。
その肩は僅かに震えている。
「ありゃりゃ……」
煙草を灰皿で消し、目の前にいる恋也の頭に手を置いて「久しぶりだな」と優しく声をかける。
**
『てめっ! あん時はよくもやってくれたなぁ』
『…………』
『何とか言え!!』
少年の叫びと共に鉄パイプが振り落とされる。
その瞬間、何者かの手で鉄パイプが恋也の頭に当たる手前で動かなくなる。
『子供がこんなもので遊んだらいけないだろ?』
誰だとか、何だとか、そんなお決まりの様なセリフが聞こえるが鉄パイプを持っている少年はとっくに鉄パイプから手を離して、1番初めに逃げ出した。
それに続いてもう1人も逃げ出して行く。
結局その場には鉄パイプを持った男と恋也しか居なかった。
『助けてなんて言ってませんけど』
『たまたま通り道だったから、止めただけだ』
ジャケットを羽織っている男は鉄パイプを壁
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