予期せぬ再会
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るのはそのおかげだぞ。そして忘れるな。お前に対する待遇はけしてお前の力じゃない。全ては雷鋼の爺さんがお前のバックにいるからだということを」
「はい、それは勿論です。俺みたいな小僧に価値を見出してくれるのは、師匠あってのものなのだと肝に銘じておきます」
「そうか、その言葉忘れるなよ」
念を押すように言うと、卜部は徹を殺すことを完全に断念した。そう、実のところ、卜部は実は徹を始末することも考えていた。なぜなら、徹という存在は卜部に脳裏に刻まれた大失敗を思い出させ、己の甘さ加減を否応なく自覚させられるからだ。
2000年9月に起きた桐条の実験、卜部を派遣したファントムを含め、葛葉、メシア教・ガイア教等の有力組織は、シャドウを過小評価し、結果として、みすみすそれを見過ごしてしまう。他組織も同様の状態であったことから、責任こそ問われなかったが、卜部自身組織から厳しい叱責を受けている。
だが、IFの話をすれば卜部だけには、真相に迫りうる可能性があったのである。そう、徹というペルソナ及びシャドウの脅威を知る存在を彼は確保していたのだから。今更言っても詮無い事ではあるが、もしあの時、卜部が仏心を出して徹の存在を隠蔽していなければ、ファントムは調査継続を命じた可能性が高い。それどころか、徹のペルソナ能力を見れば、脅威と見て桐条ごと計画を潰していた可能性すらある。それを思うと、卜部は己の甘さを思い知るほかないのだ。済んでしまったこと、覆水不返であるとしても、IFを考えてしまうのが人情というものだ。それが己の欠点からきたものであるなら、尚更である。
すなわち、己の甘さの証、失敗の具現とも言うべき存在が徹なのだ。卜部がそれを消し去りたいと考えるのもの無理ないことであった。とはいえ、チェフェイを徹が呼び出した時点で、卜部はそれを早々に諦めていた。殺すリスクがあまりにも大きすぎる為だ。正直なところ、同格の力量とはいえ、勝てる確信こそないが、徹とやりあって負けるとは卜部は露程も思ってはいなかった。サマナーにとって個人の戦闘力よりも、仲魔である悪魔のそれが重視されるからであり、それをいかに上手く使いこなすかが、サマナーの腕の見せ所であるからだ。
しかし、チェフェイを召喚された時点で、同格の力量だというのにサマナーという優位はなくなってしまった。勿論、実戦経験や悪魔使役の技量で負けるとは思わないが、仲魔の相性次第では敗北は十分にありえることだ。しかも、一族秘伝の『影封じ』の法で呼び出したのだ。それは雷鋼が徹を己の弟子として認めていることの証左に他ならなかった。この時点で、最早完全に殺すリスクの方が殺して得られるリターンを上回ってしまったのだった。
それでも、徹が心得違いをした分をわきまえない愚者であるならば、多少困難であっても殺すつもりであったが、
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