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FOOLのアルカニスト
予期せぬ再会
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 終わりにするつもりだっただけに徹の提案は、卜部にとって意外なものであったが、卜部としても知りたいことはまだある。―――――特に、雷鋼が徹を表に出していることについて。

 「いいだろう。この先の駐車場に車を止めてある。用が済んだらこい」

 「分かりました」

 目の前の少年が何を話すつもりなのか、それが自分に何をもたらすのか、一抹の不安と期待を胸に抱きながら、卜部は画廊を後にしたのだった。

 卜部の後を追うべく早々に画廊での急いで用を済ませようとした徹だったが、雷鋼の注文により防具一式があらかじめ用意され、すでに料金も支払われていることに驚き、その力と周到さになんともいえない気分を味わうことになる。しかも、普段着として着れるような服も何着か用意されており、鍛錬に使用すると思われる中華風の道着まで用意されていたのだから、最早言葉もない。が、よく考えてみれば、マダム銀子の出会いからして、雷鋼が手を回したものだったのだから、これもある意味予想してしかるべきだったのかもしれない。特に防具などは出来合いの物など、常に死と隣り合わせのこの世界ではまずありえず、オーダーメイドが通常なのだから、これは徹の認識不足といえよう。
 しかし、何もかも雷鋼の手のひらの上のようで、仕方のないことと理解はしても、おもしろくないと徹は思ってしまう。むしろ、感謝すべきなのだが、師への反発をどうにも捨てきれない徹であった。

 まあ、それはさておきとりあえずの用を済ました徹だったが、卜部の元へ向かいながら自問自答していた。――――何を話すつもりなのかと?

 (思わず言ってしまったが、本当に何を話すつもりなんだ俺は?妻子の件は師匠が言っても駄目だったんだぞ。それとは比べくもないただの知り合い程度の俺が、何を言っても無駄だろう。大体、妻子の危険を警告するにしても、どうするつもりだ?確実に起こるか分からないことで不安を煽るだけになったらどうする?確かに現状のままなら高確率でありえる未来だけど、それは結局予測にすぎず確たる根拠はない事に変わりはない。だからといって、何も言わず見過ごすのもな……。)

 いくら考えても堂々巡りになってしまい、確たる答はでない。だが、運命はどこまでも残酷であった。結局、徹は最良の未来が見出せないまま、卜部の待つ場所に着いてしまったのだった。

 「来たか、リャナンシー分かってるな?」

 「はい、ウラベ様」

 卜部の言葉にリャナンシーは頷くと、一旦車から降りて徹に助手席を譲ると自身はその真後ろにあたる後部座席に座った。

 「流石ですね。では、こちらも見習いまして……チェフェイ!」

 「はいはい、主様お任せをー」

 影から音もなく顕現したチェフェイは、リャナンシーの隣、すなわち卜部の真後ろの座席に陣取っ
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