予期せぬ再会
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けているのは命なのだということを。多額の報酬は命という掛け金に対する配当に過ぎんということを。配当に目が眩み真に必要なものを失わぬよう心せよ」
徹の驚きと疑問に対し、雷鋼は戒めるように言うと懐から3通の封書と地図を取り出し、徹に渡した。
「3通も?」
「紅の1通は業魔殿のヴィクトルに、蒼の1通は葛葉のマダム銀子に、白の1通は八角酒店の女将に渡せ。ヴィクトルは紹介なしに手を貸してくれる男ではないし、フリーで生きていくつもりなら、そろそろ葛葉に顔を繋いでおいたほうがいいじゃろう。そして、八角酒店の女将はお前に必要不可欠な仕事を斡旋してくれる。これも、ある程度の信頼と実力を保証する紹介者が必要じゃが、儂がやってやる。場所は、地図にマークしてある。ついでに、サマナー御用達の店の位置もマークしてあるから、どんなものか見てくるが良い。
これで儂がお前にしてやることは終わりじゃ。後は、己で何とかせい」
「了解、至れり尽くせりでありがたいこった。何か注意すべきことはあるか?」
「そうじゃな、葛葉の女狐には気をつけよ。あれは酸いも甘いも噛み分ける底知れぬ女よ。そして、葛葉の狂死ことキョウジには絶対に関わるな。お前には手が負えん相手だし、色々な意味厄介な男だ。命が惜しくばけして関わるでない」
「分かった、肝に命じておくよ師匠。それじゃあ、行って…「待て」…なんだよ、まだ何かあるのか?」
出かける準備をしようと踵を返そうとした徹に、制止の言葉がかかる。
「その格好で行く気か?」
「え?だって他に服なんかもってないし……おかしいかな?」
雷鋼の問に己の格好を見る徹だが、別段おかしいとは思わないようだ。その反応で、雷鋼は頭を抱えたくなった。なぜなら、徹の格好はお世辞にもまともとは言えないからだ。四肢につけられた超重量の錘を皮切りに耐刃繊維で編まれた着込み等、余りにも物々しい格好であった。一言で言えば、ただ道を歩いているだけで、職務質問を受けるであろう格好である。そんな格好をおかしいと思えない辺り、徹の感性は駄目駄目であった。
とはいえ、これはけして徹だけのせいではない。仮弟子として1年、正式な弟子として4年、合計5年にわたる修行期間は徹の一般人としての常識や感覚・感性を奪うのには十分すぎたからだ。いや、正確に言うならば、そうしなければならなかったのだ。一度死を経験しているとはいえ、一般人のずぶの素人が悪魔と戦えるだけの戦闘力と精神を身につける為には、戦闘と生き残る術に特化し、それ以外のことを切り捨てる必要があったに過ぎない。中でも着飾るとかの外見を気にすることはそのさいたるものであったというだけの話だ。
肝心の現在の服装は基本的に戦闘に特化した修行着であり、寝間着を除けば平服はここにくる前に
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