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FOOLのアルカニスト
予期せぬ再会
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こそ徹は逃げる気などこれっぽちもないが、仮弟子だった当初はに脱走する気満々であった。なぜなら、いくら一度死を経験し成人男性としての精神をもってはいても、徹は一般人のズブの素人でしかなかったからだ。後のために強くなるという目的があっても、雷鋼の失敗=死の鍛錬など到底受け容れられるものではなかったのである。最初の内は鍛錬の最中に他の事を考える余裕などなく、ノルマをこなした後も泥のように眠りこけるのが常であった。しかし、人間嫌なことでも慣れてしまうもので、3ヶ月程たった頃には、鍛錬終了後に逃亡の可能性を考える余裕ができるようになる。実際、脱走を企てたことも、そして実行したことも一度や二度ではない。その度に雷鋼あるいはその仲魔によって悲惨な結末になったのは、徹がこうしている以上語るまでもないだろう。

 「確かに今更じゃな。まあ、それゆえに儂はお前にある程度の自由を認めることができるというわけじゃ。今日からは、早朝から正午迄の鍛錬及び深夜の鍛錬を課すことにする。午後はお前の自由に使うがよい。遊ぶも学ぶもお前の自由じゃ」

 「そいつはまた随分太っ腹な提案だな。師匠、頭でも打ったか?」

 突然降って湧いた自由に戸惑い、そんな事を言う徹。

 「安心せい。儂が何の義務もなしにお前に自由を認めるわけないじゃろう」

 その言葉を待っていたと言わんばかりに人の悪い笑みを浮かべる雷鋼。徹は嫌な予感を感じざるをえない。

 「義務?ははは、なるべく簡単なものにしてくれるとありがたいな……」

 どこか乾いた声で拙い希望を口に出すが、徹は理解していた。その希望が絶対に叶えられないことを。

 「うむ、お前なら簡単なことじゃ。これからの生活費用は自分で稼げ。後、これまでお前にかけた費用の返済として、年5000万円の返済を3回義務付ける。何、高々1億5千万円の借金と己の食い扶持を稼ぐだけじゃ、お前なら軽い軽い」

 「全然容易くねえ!10歳児に1億5千万円の借金とかありえないから!大体、食い扶持稼ぐのすら無理があるわ!」

 なんでもないことのようにいう雷鋼に、思わず全力で反発する徹。まあ、無理もない。日本の一般のサラリーマンが生涯で稼げる額が約3億円であることを考えれば、10歳児にその半分にあたる1億5千万円もの借金である。常識的に考えて、不可能というほかない。

 「ふん、安心せい。こちら側で稼げる金は表とは桁が違うわ。年齢も関係ない。実力さえあれば、1億や2億ははした金じゃ。紹介状は書いてやる。後は己でどうにかせい」

 「1億がはした金だって?!そんなに稼げるものなのかよ!」

 「この世界は常に需要が供給を上回っておるからな。ある程度の実力があれば、引く手数多よ。まず、金に困ることはないじゃろう。但し、忘れるな。我等が賭
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