予期せぬ再会
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は微塵もない。
(確かにそうだ。信用できないなら、使わなきゃいい。それ以前に、このメモを捨てちまえばいいんだからな。それによく考えてみれば、強くなったとはいえこいつは前世も含めて元一般人だ。常人的な思考が残っていたとしても、何ら不思議はないか……。やれやれ、俺もこの世界に毒されすぎかもな。深読みしすぎだ)
「分かった。貰えるものは貰っておく。一応言っておくが、俺の番号は教えないぜ」
「ええ、構いませんよ。それでは失礼します」
一礼して背を向けて去っていく徹。その背後には、チェフェイが付き従う。その様を複雑な心境で卜部は見送るのであった。
「主様、なぜあのような申し出をされたのですか?あれは女を不幸にする中途半端な男です。どう転んでも主様の益にはならないと思いますよ」
業魔殿に入ろうとしたところで、徹はチェフェイに問いかけられた。
「中々辛辣な批評だな。まあ、内容については概ね同意するがな。先も言ったとおり、恩返し以上の意味はない」
「恩返しですか……。本当にそうでしょうか?」
「何が言いたい」
「主様は前世の知識により、あの男の末路を知っているんですよね。それに同情して、くだらない正義感から救ってやろうなどとお考えなのでは?」
「同情していることは否定しない。だが、正義感とは違うな。確かに哀れだと思うが、それは自業自得な部分も多々あるし、高確率でいずれありえた未来だからな。だから、救える可能性がある選択肢を提示したに過ぎない」
「選択肢の提示ですか?」
「そうだ。大体にして、俺が知るとおりになるのかも不明だ。なにせ、俺というイレギュラーが存在し、彼は深く関わってしまったのだからな。それに、もしそうなったとしても、俺がそこに都合よくいけるかも分からないし、間に合う保証もないし、彼が俺に頼むという発想をする保証もないからな。
だから、あれは恩返し以上の意味はない。まあ、都合よくその助けになればとは思うが、それ以上ではないな。少なくとも、頼まれもしないで助けようとは思わん。それに……」
後に続くはずの「俺に誰かを救えるとは思えん」という言葉は声にはならなかった。しかし、それこそが、この世界の自分であり、弟のように思っていた半身『透夜』を救えなかったという後悔を根底に抱く徹の偽りなき本音であった。
「なるほど、主様はお優しいですねー」
「優しくはない。甘いだけさ。それでいて、積極的に救おうとする意思もない。ただの自己満足に過ぎん。さて、無駄話はここまでだ。行くぞ」
「はい」
自嘲するようにだが、はっきりと言う年若い主の背中を興味深げに見つめながら、悪魔は主の後を追うのであった。
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