第八話:少女の闇
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ないか」
掲げた右手は、指先が青く透けていた。
レンのこの現象は今に始まったことではない。それこそログインしたすぐ後、あの地獄の始まりの前からこのような現象が起こっていた。
ゲームマスターであり、ナーヴギアの生みの親である茅場が言うには、『接触不良』。
ナーヴギアから発せられる電気信号を、レンの脳はなんらかの作用によって拒絶してしまっているのだ。
「……くそ」
体にノイズが走る不快な感覚。
ペインアブソーバの機能すら拒絶してしまっているレンは、アバターでありながら感覚がある。
つまりは、攻撃を受ければ痛みを感じ、過剰な痛みを受けると生身の肉体にも影響が出ることになる。
「ぐっ…ぁっ…!」
視界を蝕むノイズは先程から酷くなるばかり。
最前線で戦い続けてきたレンは、多くの痛みを受けてきた。それこそ、腕を切り落とされ、足を刈り取られたりもした。その度に如何ともしがたい痛みが駆け巡り、そして脳が「もうやめろ」と拒絶反応を起こす。
現在のレンの状態も、まさしくそれである。
ボスから受けた痛みが脳の許容範囲を超えて、意識を奪おうと躍起になっている。
「ぁあぁぁああ……!!」
常人ならば容易く気絶している程の痛みを受けて、しかしレンはその意志で以って脳の命令を拒絶する。
このまま、命令に従って意識を落とせば最後、自分はこの世界から立ち去り、そしてナーヴギアから発せられるマイクロウェーブで脳を焼き切られ死ぬことになるだろう。
「あ″あ″あ″あ″あ″ッ」
それは、できない。
オレが終わらせると約束した。
お前達の分まで生きると誓った。
だからなんとしても、生き残らねばならない。死に物狂いで、泥臭くても、醜いと言われようとも。
「死ねる、かっ…よォ……!」
振り絞った言葉は惨めな程に震えていて。伸ばした右手は頼り甲斐なく震えている。
しかし視界を覆うノイズは段々と勢いを潜め、その存在を薄れさせていく。
「はぁ…はぁ……ぁ…」
先のラフコフ戦のようにノイズの海に突き落とされることはよくあるために余り気にならないが、痛みを含むソレは危険すぎる。
前者は不快感に耐えれば自然と復帰するのに対して、後者は完全にレンの意志の強さ次第だ。
痛みに打ち勝てば復帰、負ければ死亡。
明らかなハンディキャップ。
しかしそれを今更言っても仕方がないのも事実。
「はぁっ……あーー、危なかった」
既にこの事実を受け入れているとはいえ、辛いものは辛い。
レンの意志が人並み外れて強力だから今まで生きながらえているが、恐らく他のプレイヤーがレンと同じ状態であったら一ヶ月も保たなかっただろう。
恐らく、あ
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