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ONE PIECE《エピソードオブ・アンカー》
episode5
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いのは、やはりアンカー本人である。


「......どういう意味?」

「ニュ〜...そ、それはだなぁ」


 ハチが控えめに説明する。17の子供とは言えども女性であることに変わりはない。新聞の記事で、胸が小さいと皮肉られて気を悪くしない女性はいないと考えたのだ。
 だが、そんな予想をアンカーは裏切った。


「コイツ、魚人をそこらの魚なんかと一緒にしたのか......殺す」


 船員たちの中から咄嗟に「そこかよ!」だの「違ぇよッ!」だのと声が上がる。


「ーーーはあ? ワタシの悪口? ......どれが?」

「ここだよ、ここ!」

「まだその字わかんないし...」

「お前の胸が小さいって書いてあんだよッ!」


 アンカーの表情に変化が現れる。それは『不愉快』でも『羞恥』でもなく、ただの『疑問』。どうして周りがこんなにも騒ぐのかが分からない、といった様子で首を傾げる。
 しばらく考えた末、アンカーは1つの答えを思いついた。


「ワタシ、元々胸無いよ。言ってなかったっけ?」


 もしかしたらと、尋ねてみる。
 思った通り、彼らは知らなかった。アンカーにあるべき胸は、コバンザメ特有の吸盤により目立たなくなっているという事実を...。


「胸が小さいのは本当のことだし気にしないよ。戦う時には邪魔でしかないしね。何? ......アンタら、そんなことで騒いでたの? 男は野蛮だなあ...」


 その一言で、血の気の多い男たちはキレた。
 それぞれエモノを手にし、得意な攻撃をアンカーに向けて仕掛ける。

 刃を振り回す者を、ひらりひらりとかわす。大きな体でのしかかろうとする者を、飛び跳ねて頭を抑え込んで倒す。魚人空手で攻撃してくる者を、同じく魚人空手で捌く。
 ある者はアンカーに向けた拳をよけられてしまい、その先にいた者と同時打ちになった。

 アンカーはこの中で1番非力だが、1番弱いわけではない。むしろ強い部類に分けられる。その秘密は、相手の力を利用して攻撃をする...合気道に近い立ち回りのお陰であった。

 誰に習ったわけでもない。幼い頃から襲われる日々の中で、自然と覚えていったものである。


「いい加減にせんか貴様ら!!」


 そんなアンカーの立ち回りも、ジンベエの怒号と愛ある鉄槌により終わりを迎えた。
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