第141話 孫権
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置くのが正宗にとって利が大きかった。
「先輩、この私を信頼してくださいませんか?」
孫権は正宗を真剣な表情で見つめた。
「孫仲謀、口約束のみで信頼しろというのは無理があるぞ」
「分かっています」
孫権は正宗の言葉に頷いた。正宗は孫権に話の続きを話すことを促すように視線を送った。
「私には如何な理由があろうと母上と姉上を斬ることはできません。それが義に反しようとです」
正宗の側に控える泉は孫権の言葉に怒りを覚えているようだった。
「では人材は紹介できないな」
正宗はきっぱりと孫権に言い放った。彼は泉に視線を送り、会話は終わりだと言わんばかりに立ち上がろうとした。
「お待ちください。話は未だ続きがあります」
「続きだと」
正宗は渋々丸太に座り直して孫権と再度対面した。
「もし、母上と姉上が先輩から受けた恩を裏切りで返すようなことがあれば、私が母上と姉上の前に立ち塞がります」
「殺せぬのに如何にして立ち塞がるというのだ?」
泉は孫権を馬鹿にしたように言った。
「母上と姉上に立ち塞がり死ぬ覚悟があります」
「お前が立ち塞がろうと、お前の母と姉はお前を殺さぬと思うがな」
「ならば自決いたします」
「簡単に自決をするなどいうものでないぞ。人は早々自決などできるものでない」
正宗は呆れたような目つきで孫権のことを見た。彼も燕璃のような人物が「自決する」と言えば信じたろうが、孫権の言葉は信頼できなかったのだろう。
しかし、正宗は原作知識があり、孫策が孫権に孫呉の未来を掛けていたことを知っていた。孫堅と孫策が裏切ろうと孫権が死ねば、孫家陣営が混乱することは明白だ。その混乱に乗じて孫家陣営を制圧することも可能だと正宗は考えているようだった。正宗は孫権を呆れた表情で見つつ、視線を虚空に向け考え込んでいた。
「先輩、直ぐに返事をいただかなくても構いません」
孫権はそう言い残すと頭を下げて立ち去って行った。
「正宗様、いかがなされるのですか?」
泉は孫権が立ち去るのを確認した後、正宗を伺うように聞いてきた。
「使えないことはない。だが腹を括るには材料が少ない」
「孫家は危険と仰っていたではありませんか?」
泉は正宗のことを訝しんだ。
「孫文台と孫伯符は危険だ。だが、孫仲謀は違う。奴は律義者だ。ああいう奴は使える」
「しかし、孫家に肩入れしては正宗様の風評に傷がつくかと」
「傷がつく以上の利益があればいいのだ」
「『利益』ですか?」
泉は正宗の言葉の真意が測りかねているのか正宗に尋ねた。
「そうだ。蔡瑁の件もある。そろそろ奴も動くかもしれんしな。まあ、結論を急ぐ必要もない」
正宗は孫権の去っていた
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